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【社説】

教員採用汚職 まだ幕引きはできない

2008年9月15日

 大分の教員採用汚職事件を受けて各地の教委は人事制度を見直しているが、道半ばだ。当の大分県教委は不正合格した教員の採用を取り消した。しかし、未解明部分が多く、幕引きとはいかない。

 事件発覚後、文部科学省は全国六十四の都道府県・政令市教育委員会に対し、教員採用や管理職昇任のあり方について調査を行った。八月二十九日の時点で何らかの改善策を決めたという教委は六十一にのぼった。

 事件を他山の石として自らの制度を点検するのは望まれる姿勢だが、大半の教委が改善するという状況は、各地で人事制度に問題があったということだ。

 見直されるのは試験問題の配点や選考基準の公表、成績の本人への開示などだ。制度の透明化を積極的に進めてほしい。

 教員採用をめぐっては、すでに四十八の教委が県議や国会議員秘書などに合否を伝えていたことが明らかになっている。なかには受験者本人に連絡する前に情報を漏らしていたケースもあった。

 そんな便宜供与の実態を認めながら、六十三教委は「過去に不正行為はなかった」という。お役所調査の限界と言えばそれまでだが、不信感が解消されない。

 不正情報は現在も文科省などに寄せられている。各教委はもたらされた情報を真摯(しんし)に受け止め、解明する努力をみせてほしい。

 口利き防止には制度が必要ではないか。個別連絡をやめるだけでなく、口利きがあった場合には氏名の公表も考えるべきだ。そこまでしないと信頼回復は遠い。

 大分県教委は教員二十一人に採用試験で不正が見つかったとし、六人の採用を取り消した。残りの十五人は自主退職手続きだ。

 処分は昨年試験の不正合格者だけで、小中学校と養護の教員に限られる。それ以前の試験や高校教員採用で不正はなかったのか。

 調査報告をみると、元県教委幹部が「県議、県教委OB、市町村教委幹部、教職員組合役員らから依頼された」と話している。二〇〇一年度以前のことという。

 口利きしていた県議らの氏名が明らかにされていない。県教委の責任も不明確だ。これでは自らが知らないところでの不正で教壇を去った若者が救われない。

 県教委はこれ以上の調査をしないという。しかし、こんな結果ではけじめがついたとはとても言えない。全員辞職し、外部委託した再調査を行うべきではないか。

 

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