桜井淳所長の提唱する臨界安全規制のパラダイム転換-雲泥の差がある日米の臨界安全規制-
テーマ:ブログ桜井淳所長に拠れば、日本の臨界安全規制は、臨界安全ハンドブックが刊行された20年ほど前から実質的にはほとんど進歩しておらず、他の原子力先進諸外国と比べて非常に大きな遅れをとっているそうで、臨界安全ハンドブックは、科学技術庁核燃料規制課が編纂し、役所みずから率先してこのような取組みしたことは、当時としては極めて画期的だったそうですが、その後東海村での臨界事故などを経て省庁再編によって経済産業省原子力安全・保安院に臨界安全規制の権限が移行してからというのは、文部科学省傘下の旧日本原子力研究所の研究資源を、原子力安全・保安院が直接的に利用しづらくなり、また、一方で、臨界安全の規制権限を失った文部科学省では旧原研に委託していた再処理臨界安全技術開発の特別会計事業の位置づけが、規制目的なのか開発研究なのかの区別など、何がなんだが訳が分からなくなり、桜井所長に拠ればこの事業は、明確な長期計画もビジョンも何もなく木に竹を接いだような行き当たりばったりの予算消化に終始し、また、経済産業省が旧原研に委託したMOX燃料加工施設の臨界安全調査事業も、Sという出向者が学位論文を書くために予算を食い物にしたため完全な失敗に終わったそうで、このような省庁再編時のボタンの掛け違いが「失われた20年」となって現れ、旧原研の臨界安全研究を引き継いだ日本原子力研究開発機構には、もはや臨界安全のシンクタンクとしての能力はなく、かわりに原子力安全基盤機構が、研究機関やメーカーの実力者を中途採用で引き抜いて経済産業省の豊富な予算を背景に長期的なビジョンでもって臨界安全のCOEとしての地歩を固めているそうで、原子力安全・保安院にとって日本原子力研究開発機構の臨界安全研究に期待することは何もないそうですが、そのことは最近改編された「原子力ハンドブック」の臨界安全の項目の執筆者がすべて原子力安全基盤機構に独占されたことに現れているそうで、当の日本原子力研究開発機構にはそのような危機意識すらなく、現行の臨界安全規制体系を金科玉条として保持していくことが自分たちの使命だと思い込んでいるそうですが、それはさておき、桜井所長は、日本で何十年も前の規制手段がいまだにまかり通るその病理の解明に成功したそうで、それは米国NRCによる臨界安全規制と対比して浮き彫りになったそうで、NRCでは臨界安全の規制担当者は、臨界安全に関連した学位を持ち、アメリカ原子力学会などの学会活動に積極的に参加し、最新の情報を絶えず入手し、論文発表も行い、臨界安全の基本理念から規制方針に至るまで自ら思考し、企画・立案し、そしてそれを規制に反映させていくだけの高い能力を持っており、桜井所長が特に驚いたのは、NRCの担当官が申請者から臨界安全解析コードの入力データを入手し、自らそれを解読し誤りがないかチェックしているそうで、そこまで徹底しているのかと感心したそうですが、一方で、日本の安全規制は、担当官の分担は専門性によって分かれているのではなく、規制対象施設ごとのいわゆる縦割り行政となっており、ごく数名の担当官が再処理施設なら再処理施設の規制の全てを担当し、ジェネラルにはよく知っているものの、個々の専門知識はほとんどないために、また、数年ですぐに異動するために、何も新しいことはできないし、やならいそうで、申請者もそれをいいことに、何十年も前の文献の安全基準値や計算コードを使い続け、担当官も前例踏襲の日本の役所の慣例に従いそれを許可しているそうで、したがって申請者側にも許認可手段をより最新のものに改めようとするインセンティブが何らなく、いつまでもまったく何も進歩しないそうで、日本版NRCを作るなどと息巻いている人もいますが規制体系を根本的に改めなければいくら予算と人を増やしても何も変わらないそうで、桜井所長はこのような臨界安全規制のパラダイム転換を図りたいそうですが、また、このような病理を科学技術社会論の論文として発表したいそうですが、多くの分野でパラダイムを転換させてきた希代のパラダイムシフターの桜井所長でもこれだけは一筋縄ではいかないそうで、臨界安全の学識経験者として安全規制にも影響力を持っているY教授などとも相談して長期的なビジョンでもって取り組んで行きたいそうです。