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【主張】教委改革 仲間内のなれ合いを断て
大分県の教員採用汚職事件で、教育委員会への信頼が揺らいでいる。文部科学省は19日に都道府県や政令市の教育委員長を集めた臨時会議を開く。教委改革を真剣に進めてほしい。
事件を受け大分県教委は過去10年の人事担当者らに聞き取りした調査報告をまとめた。
それによると、県議や県教委OB、教職員組合役員などから「頼みます」などと依頼があり、合格ラインに達していなくても合格させたケースが過去にもあったことが証言されている。
また教員採用や昇進試験で不正を許した背景として、あいまいな選考基準のほか、仲間・身内を優先する教員社会のなれ合い体質や県教委のチェック機能の欠如をあげる意見が多かった。
仲間意識が強い教員の間では異動・昇進などでお祝い、お礼が慣習として根強く残るという。
さらに教員出身者が教育委員会に入っても、学校と同じように「個人で仕事をし、互いの仕事に干渉しない」という行動をとり、それが不正見逃しの背景にもなっているようだ。
教委事務局をチェックしなければならない教育委員についても組織体制の不備を見過ごし、事件を防げなかったと指摘された。
こうした不正の構造は他の教育委員会も無縁とはいえない。
採用選考方法などを見直す教委は増えているものの、大分の事件を契機に泥縄式のケースもある。昇進人事に関しては教員評価制度などまだ課題が多い。
教育委員会はこれまでもいじめ問題などで批判を受け、改正地方教育行政法では、学識経験者や保護者らから選任される教育委員の役割を含め、責任体制が法律上も明確化された。
それにもかかわらず、なかなか教育委員会は変わらない。
全国学力テストの情報開示をめぐっても前例や横並び意識が抜けず、市町村別や学校別の結果公表に消極的だ。これでは全国規模で成績が把握できる貴重なデータを生かせない。
この問題では大阪府の橋下徹知事や秋田県の寺田典城知事らが市町村別の結果公表を促す考えを相次いで示した。教育委員会はこうした提案を真摯(しんし)に受け止めて実行すべきだ。
教委改革は、広く外部の意見を聞き、狭い教育界の悪弊にとらわれず進めねばならない。