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傷害:フリースクール経営者ら逮捕 入所少女に暴力 京都

 フリースクール入所者の少女に暴力をふるってけがをさせたとして、京都府警捜査1課と南丹署は9日、同府京丹波町の「丹波ナチュラルスクール」経営者、江波戸聖烈(えばとせいれつ)(60)と責任者の森下美津枝(55)の両容疑者を傷害容疑で逮捕、施設の家宅捜索を始めた。スクール側が保護者から入所費用として1人当たり数百万円を受け取っていたとの情報がある一方で、入所者の居室に外鍵を三つかけるなど出入りを制限していた疑いがあり、府警は全容解明を進める。

 調べでは、江波戸容疑者らは8月3日、スクール内で、兵庫県内の中学生の少女(14)に殴るけるの暴行を加え、顔などに全治17日間のけがをさせた疑い。少女は同13日、他の女性2人と逃げ出し、南丹署が保護。これを受けて府京都児童相談所が15日、立ち入り調査を実施し、10代の少女3人を保護した。南丹署が入所者らから事情を聴いたところ、いずれも「暴力を振るわれた」「賞味期限切れの食品を食べさせられた」などと話したという。

 スクールは丹波地方の山間部で、西岸寺境内にある。プレハブの事務所2階に男女別の居室があり、ともに外から三つの鍵が掛けられ、室内からは外せないようになっていた。

 ホームページなどによると、スクールは引きこもりの若者らの就業支援などを目的としており、江波戸容疑者が家族らと共に運営。「20年の実績」があるとうたっている。

 府警によると、保護された人を除く現在の入所者は未成年者2人を含む男女12人。保護者は入所時におおむね200万~350万円を支払っていたが、金額はまちまちで多い人は約700万円を支払っていたという。【珍田礼一郎、細谷拓海】

 ◇やせた子多く心配していた…近所の人

 1人当たり数百万円の入所費用、そして三つの外鍵がついた居室--。京都府京丹波町のフリースクール「丹波ナチュラルスクール」の経営者らが逮捕された傷害事件。捜査の端緒は、厳しい生活に耐えかねたことによる入所者の「脱走」だった。府警の調べに、入所者らは「暴力をふるわれた」「賞味期限切れの食品を食べさせられた」と説明したという。就労・就学支援を看板に掲げるスクールで何が起きていたのか。

 8月中旬、同町内の24時間営業のスーパーに、今回の事件の被害者となった兵庫県内の女子中学生(14)ら10代2人を含む女性3人が駆け込んできた。府警南丹署に保護された3人は「暴力から逃れたかった」と訴えたという。捜査を進めると、平手で殴るなどの暴力は日常的で、入所者が部屋に閉じこめられたとの情報もあった。

 9日午前、家宅捜索に来た捜査員がプレハブ2階の入所者の居室に向かうと、男女の部屋の扉それぞれに鍵が3個ずつ取り付けられていた。いずれも外から閉めると、中からは開かないようになっていた。

 関係者によると、保護者が心配して電話をしても、スクール側は「子供のためには電話しないほうがよい」と言って、取り次ぎを断ったり、会話を遮ったりすることもあったという。

 現場のスクールがある西岸寺付近は山間部で民家はまばら。近所に住む女性は「スクールに来た子供たちはいつのまにか丸刈りになっていた。農作業でも監視の人が『メシ食わせへんどー』などと叫んで奴隷のようにこき使っていた。やせた子が多く、ちゃんと食べさせているのか不安に思っていた」と心配そうに話した。

 一方、事件はこうした施設の実態把握の難しさを浮き彫りにした。

 京都府内には現在、不登校の児童・生徒を対象とし、学校教育の成績に反映する「認定フリースクール」が3校ある。だが、大半のフリースクールについては、各施設が独自に運営。府教委学校教育課は「塾と同じように、すべてを把握することはできない。府内の小中学生が通っているという情報がなかったので、調査などは行っていない」という。京丹波町教委学校教育課も「行政との接点が全くない。施設内部を視察したり、調査することはない。閉鎖的な状況の中で、情報が全然漏れてこない」と困惑気味だ。【珍田礼一郎、細谷拓海】

毎日新聞 2008年9月9日 12時00分(最終更新 9月9日 14時07分)

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