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  Home > 修了者は今 > vol.4 工藤 隆正さん
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スタッフ日記

   米を販売する場合その多くは"差別化して消費者に売り込む。「有機・無農薬」とか「○○産コシ」という具合である。(有)ライスボーイ(青森市新城字山田)は少し違う。地元の農家が収穫した普通の米を消費者世帯の要望に応えた米にし、家計に合う価格で販売する。工藤隆正さん(43)は「生産者と消費者がいて初めて地域経済が成り立っている。地元でとれた農産物が一番口に合うのではないか」と話している。




認定農家として米一筋
写真: 工藤さん

 工藤さんは認定農家として米一本で生きようと経営を拡大してきた。今では借地も併せて作付面積も15ヘクタールになった。これからも増やしていく。春を迎える前に「田んぼをどうしようかと困っている方、お気軽にご相談下さい。田んぼ・畑の農作業承ります」と、農家に呼びかける。耕起から代かき、育苗、田植え、稲刈り、乾燥・調製、そして農作業全般を引き受ける。

 販売については食管制度が変わり、農家が自分で作った米を販売できるようになったのを機会に「自分の米は自分でさばいていこう」と決心した。でも当初は約千俵を売り切ることができるかどうか不安がつきまとった。一時期ヤミ米販売と椰楡(やゆ)されもした。

 3年前の8月に米づくりと米の販売を経営面で明確にするため、ライスボーイを立ち上げた。8月を決算にしたのは、現物が一番少ないときがいい、との公認会計士の助言による。全国に売ってやろうと意気込んだ。誰でも起業の時は気持ちが高揚するものである。東京を始め関西、九州にまで手を伸ばした。一般消費者向けに新聞折り込み広告を、食堂など業務用としてはダイレクトメールでお客を募った。かなりの資金を突っ込んだ。

 お客の反応もさることながら、壁に突き当たった。それは代金の回収である。遠隔地への販売で多くの人が体験する問題である。詐欺まがいの手に引っかかったこともある。品物は送ったけどお金がいつになっても入らないで踏み倒されてしまった。結局、販売戦略の再検討を迫られたのである。その結果、地元の青森市内を重点にした事業展開に方向転換したのである。

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注文受け毎日配達
ライスボーイ精米工場

 個別訪問など営業活動はしていない。新聞の折り込み広告は金がかかり、利益は薄いと言われるけれども一つの有効な手段である。最初は年間で5回もやっていた。最近は春と秋の2回に絞り、中身を充実させている。電話等で注文があれば1キロでも市内は無料で、身近さという利点を生かして、午前、午後、夕方に配達する。

 販売の中心は無洗米仕上げである。青年農業士の時に無洗米の工場を視察した。今のように知られる前であったけれど「これだ」と思って、いち早く取り入れた。2〜3回とぐだけでピカピカになることから“ピカ米”という自分のブランドを作ったのである。目新しさもありちがう米として知られていった。現在のラインナップは「ピカ超徳用米」から「ピカこまちライス」まで7本である。

 他に消費者から「作って欲しい」という要望を入れて、「五分つき」「七分つき」「胚芽付米」を健康米として販売。現在のお客は消費者家庭では約一千軒。季節によって、スーパーのバーゲンなどの影響が出たりして若干の出入りはある。業務用は食堂、寿司屋、介護施設など約50社である。それに関東と北海道が少しある。

 販売方法も工夫している。年間予約だと一般の注文より10キロ当たりで100円から300円は安くなり、それに年間予約の特典もある。例えば7月にはうちわをサービスした。米の配達時には「おたのしみプレゼント」を用意している。ナス、キュウリ、トマト、ニンジン、ジャガイモなど自家製野菜であったり、リンゴや卵だったりと付ける。決めてないのが逆に消費者のたのしみを誘うことにもなる。色々と工夫をこらしながら販売額も年間約7千万円までになった。

 量が増え自分で栽培しただけでは足らなくなり、津軽地方の大規模な農家と契約して供給を受けている。栽培方法にはこだわっていない。「特別に味がいいわけではないけれど津軽の米はおいしい。“そこそこの味”の“米をそこそこの値段”で売る」が工藤さんの考えである。地元の米を売っていかなければ、地域の農業もだめになってしまう。

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今年も参加したかったが…

 ライスボーイのスタッフは5人その内2人は食味鑑定士である。食味を大切にしたいということの現れである。事業は順調に推移しているけれども心配なのは、消費が減少している中で、価格がどの程度維持できるのか。外国の米、特に中国から入ってきたら太刀打ちできないのではないか。生産者米価が1万円(60キロ当たり)を切るだろうとの話もある。これでは農家はやっていけないと見ている。

 農家の高齢化が進み、田に見切りをつける人も増えている、受委託なども含めて栽培面積を増やすのは可能である。好きなだけ作れる時代がくるかもしれない。しかし、価格が下がる中で経営を維持するためにどの程度コスト引き下げができるのかという課題もある。

 先が見えにくい中で何かを探さねばと、アグリビジネススクールに参加した。いい事例を見たかったし、刺激を受けたかった。スクールでの授業や現地視察はそれに応えてくれた、とまずは満足そうだった。特に畜産物を加工、産直などでよい成績を上げている牧場を視察し、先人の苦労話を聞いた時は感心するとともに得るところが多かったと話していた。孤立することなく、いろんな人に会い、刺激を受けるよい機会である。「農業法人や認定農業者は積極的にでかけて自分を磨くべきだ」と語り、「今年も参加したかったけれども、仕事の都合もあり……」と残念そうだった。

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