対策なき韓国の検死システム(上)
人員が絶対的に不足、2年後に死因が通知されることも
収入が少なく過酷な労働環境、法医官を若い医師が忌避
忠清南道天安市で老母の面倒を見ながら暮らす会社員ソン某さん(37)は今でも、母親の前で2年前にこの世を去った父親の話をすることができない。
2006年6月、慶尚北道慶山市の貯水池で、全身血まみれになって死亡しているソンさんの父親(当時64)=無職=が発見された。ソンさんは「手すりが高いため間違って落下したとは考え難く、自殺する理由もない」として他殺の疑いを提起した。
事件を担当した慶山警察署は、慶北大法医学研究所に検死解剖を依頼したが、1年経っても結果が出なかった。遺族は昨年、国民権益委員会(梁建〈ヤン・ゴン〉委員長)に訴え、権益委が是正措置を下した直後の今年4月、ようやく報告書を受け取った。死因は単純墜落死。およそ2年経って手にした結果だった。
この事件を契機として、韓国における検死解剖の現実を調査した権益委は、「現在のシステムでは同じ状況が繰り返される可能性が高い」として、関連学会や関係機関と共に制度の改善に乗り出すことにした。8月27日には検死制度の問題解決のための懇談会が開催され、今月末には検死関連の法律を制定するための公聴会が開かれる予定だ。
◆検死解剖、年間4500件
検死解剖の期限について、国立科学捜査研究所(国科捜)の内部規定は、溺死で7日、医療事故で30日などと定めている。しかし、検死解剖の結果報告が1年以上遅延したケースは、大邱・慶尚北道だけでも現在までに83件に上る。しかもソンさんの事件で権益委が資料を要求したため統計を取ったに過ぎず、他地域については関連資料自体が存在しない。
刑事訴訟法により、検死は事件が起こった地方庁の検事が指揮することになっているため、検死解剖の決定権限は検事にある。検事が検死解剖を指示すると、警察が該当機関に検死解剖を依頼する。1次機関は国科捜だ。国科捜はソウルのほかにも南部(釜山)・西部(全羅南道)・中部(大田)・東部(江原)に4分所あり、事件を担当する警察署に近い分所が検死解剖を行う。
しかし年間の検死解剖件数が約4500件にもなるため、警察は法医学研究所がある全国の7大学や一般の病院に対し、警察予算から1件当たり25万ウォン(約2万3900円)程度を支出して、1600件余り(2007年基準)の検死解剖を依頼している。
呉允熙(オ・ユンヒ)記者
ウォン・セイル記者
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