ケイは結局、家を買うことに同意せざるを得ない状況に追い込まれ、結婚と同時にローンを組んで家を買った。
入籍時には、まだ、新築の家は出来上がっておらず、数ヶ月の間ケイはアパートで過ごした。
その間に、ヨウコは「お母さんと一緒に住んで欲しいの」と、信じられないことを言い出した。新婚の家に嫁の母親と一緒に住むのを喜ぶ男がいるだろうか?それに、ケイは長男でいずれ両親の面倒を見なければならない。
「それはできない」と、ケイはきっぱりと言った。
しかし、ヨウコに泣きつかれ仕方なく首を縦に振るケイであった。
これは全てヨウコの計算ずくのことだろう。
入籍や家の契約も済ませてしまっており、今更何もかも白紙に戻すことなどできない。自分の母親と一緒に暮らす説得をするなど、赤子の手を捻るぐらいに簡単なことと思っていたに違いない。
卑怯なことに、ヨウコは母親と一緒に住むことを、ケイの口から母親に言わさせたのだ。
そして、家も出来上がり、一緒に暮らしだした。
だが、3人の生活はケイにとっては、苦痛以外の何物でもなかった。ヨウコは2年に渡る付き合いの中で、ケイに見せたことのない態度をしだす。
顔の洗い方から、食事の仕方まで細かいことまで指図し押し付けるのであった。
義母が常に一緒に居るので、新婚らしくイチャイチャもできない。
義母は、ケイを差し置いて一家の長であるがごとく振舞い何かに付けて口を出した。
母娘揃って、勝手なことをいい行動を取り始めた。養子でもないのに、ケイは肩身が狭く、まるでマスオさんのようであった。
家庭の異常さを知るケイ。
自分は利用されたのかもしれないとも思った。
こうなれば、ヨウコを愛していたのかさえも疑問を感じた。
こんな家庭が欲しかったんじゃない!と……。