ケイの思いとは裏腹に

テーマ:ケイのケース 2006-09-25 13:49:08

ケイは結局、家を買うことに同意せざるを得ない状況に追い込まれ、結婚と同時にローンを組んで家を買った。

入籍時には、まだ、新築の家は出来上がっておらず、数ヶ月の間ケイはアパートで過ごした。

その間に、ヨウコは「お母さんと一緒に住んで欲しいの」と、信じられないことを言い出した。新婚の家に嫁の母親と一緒に住むのを喜ぶ男がいるだろうか?それに、ケイは長男でいずれ両親の面倒を見なければならない。


「それはできない」と、ケイはきっぱりと言った。

しかし、ヨウコに泣きつかれ仕方なく首を縦に振るケイであった。


これは全てヨウコの計算ずくのことだろう。

入籍や家の契約も済ませてしまっており、今更何もかも白紙に戻すことなどできない。自分の母親と一緒に暮らす説得をするなど、赤子の手を捻るぐらいに簡単なことと思っていたに違いない。

卑怯なことに、ヨウコは母親と一緒に住むことを、ケイの口から母親に言わさせたのだ。


そして、家も出来上がり、一緒に暮らしだした。

だが、3人の生活はケイにとっては、苦痛以外の何物でもなかった。ヨウコは2年に渡る付き合いの中で、ケイに見せたことのない態度をしだす。


顔の洗い方から、食事の仕方まで細かいことまで指図し押し付けるのであった。

義母が常に一緒に居るので、新婚らしくイチャイチャもできない。

義母は、ケイを差し置いて一家の長であるがごとく振舞い何かに付けて口を出した。

母娘揃って、勝手なことをいい行動を取り始めた。養子でもないのに、ケイは肩身が狭く、まるでマスオさんのようであった。


家庭の異常さを知るケイ。


自分は利用されたのかもしれないとも思った。

こうなれば、ヨウコを愛していたのかさえも疑問を感じた。


こんな家庭が欲しかったんじゃない!と……。





生真面目なばかりに

テーマ:ケイのケース 2006-09-22 14:20:55

母親と会ったケイは、ヨウコの家にも遊びに行くようになった。
暫くすると、母親から結婚を促されるような話を度々されるようになった。
そして、ヨウコと付き合い始めて2年の年月が流れた。

ある日、趣味の集まりに「ついて来る?」とケイが言うと彼女は何を思ったのか?「はい」と答えプロポーズと勘違いし母親にプロポーズされたと話したのだ。

その事を聞き混乱するケイであった。まだ、結婚なんて早いと。

しかし、ケイの純真で生真面目な性格から後には引けない。
ヨウコを好きで嫌いじゃないのだから。

そして、結婚の話が具体的になるとヨウコは「本当はもう一つ年上なの」と、告白するのであった。結局のところヨウコはケイより2歳年上だったのだ。この時代に結婚適齢期と言われる年齢にすでに達していた。故に、更にヨウコと母親は焦っていたのだ。この時期を逃すと行き送れのように言われる時代だった。

結婚の話が具体化し、今更ヨウコが2つ上だと聞いても、ケイはどうすることもできず受け入れるしかなかった。

田舎育ちで、まだ若くスレてないケイを手玉に取るのは2歳年上で都会育ちのヨウコにとって他愛もないことだっただろう。


仕事が忙しくデート以外で無駄遣いをしないケイは、田舎の両親に仕送りをしながらも自然と預金は貯まりケイの口座には450万の蓄えがあった。隠していればいいものを、それをヨウコに話してしまうケイであった。


ケイに450万の預金があることを知り借家住まいだったヨウコは、結婚式を挙げるより「家を買いましょう」と、言うのだった。

そんな気のなかったケイを、家を買うことにどれだけのメリットがあるか雄弁に語り、言葉巧みに説き伏せケイを納得せざるを得ない状況に追い込んで行くヨウコだった。


この家が、ケイの不幸な結婚生活の始まりになるのだが、そんなことを知る由もないケイであった……。



ヨウコの思惑どうりに

テーマ:ケイのケース 2006-09-21 13:21:43

徐々にヨウコに惹かれていったケイは付き合うことに決めた。
けれど、結婚などまだ先のことだと思っていた。
ところが、ヨウコは付き合い始めて2ヶ月も経たない内に「お母さんに会って欲しい」と言うのだった。


ケイにはまだ会う気など全くなかった。

ある日、デート中に「本当はあなたより一つ上なの」と、ヨウコは隠していたことをケイに話した。ケイはヨウコを同じ年だと聞いていたし思っていた。この頃には、ヨウコに惹かれており、驚きはしたがそれを咎めることもなく受け入れた。

デートの後、ケイはヨウコの住まいのある最寄の駅まで送って行った。それを役目のように感じ毎回送って行くのであった。

出会って4ヵ月後「お母さんが仕事終ったら外食しようって待ち合わせしてるの」と言うので、その駅までヨウコを送った。
ヨウコが待ち合わせをしていると言ってた時間よりかなり早く着いた。ところがホームにはすでに母親がいたのだ。
これは、一刻も早くケイに母親を会わせたかったヨウコが、彼が必ず駅まで送ってくれるのを計算した上で仕組んだに違いない。

ヨウコはケイなら母親と自分の思い通りになるだろうと考えていた。
事実、ケイの日記を読む限りそんな青年だった。この頃も、相変わらず純真無垢で人を疑うことなどしないしできないのが見て取れる。

故に、彼女は母親にケイを会わせて、少しでも早く結婚に向けて意識させようと考えていたと思う。
ケイはまだ若く好青年でモテていた。純情青年だけに、いつ他の女に持っていかれるか分らない。それもあって、彼女は焦っていたのだろう。

ケイを巧みに罠にかけて行くヨウコ。


ヨウコの会社の独身女性はケイの会社の男性と結婚するのが憧れでもあったのだ。社名は言えないが、言えば誰もが納得できるだろう。
その頃は、終身雇用の時代でケイが定年まで勤めれば、ある程度昇進し収入が上がっていくのは確実だった。

ケイはヨウコに取って絶対に逃してはいけない獲物だった。

ケイのアパートにヨウコは通うようになった。
この頃にはキスは済ませ、ヨウコの体を触るまではいったが、罪悪感が先たち決して一線を超えようとしないケイだった。
ヨウコはヨウコで、結婚をするまでは一線を超えさせてはいけないと思っていたのだろう。


彼女は次第にケイの部屋に来るのを嫌がるのだった……。



したたかに

テーマ:ケイのケース 2006-09-20 13:15:33

時給が上がったことを夫も喜んでくれるだろうと思っていたが、それは甘い考えだった。
夫は私が勤めていることに、腹立たしい思いを常に抱えており認めるというような寛容さは持ち合わせなかったのだ……。



私と出会って1年が過ぎたころ、ケイは私に3冊の日記を差し出した。

ケイの部屋に日記があることはしっていたし、興味はあったが勝手に見るようなことはしなかった。


そして、ケイが会社に行っている間に高校生の頃からの日記を読んだ。


これ以降は、ケイの日記と話を元に書き進んで行く。

ケイは温暖な地方の島で、末っ子の長男で生まれた。

女の子しか居ない家に男の子が生まれて両親は大そう喜んだそうだ。

野山を駆け回り、夏には海で泳ぎ釣りをしたりで遊ぶことには事欠かない少年時代を過ごした。


日記は高校生になってからのものである。

この頃のケイは活き活きとした高校生活を送っている。

友人関係に悩み、恋に苦悩する純情そのもののウブな男の子の内面が綴られていた。


高校では成績は優秀で、高校から幾つもの優等生バッチをもらった。

進学を希望したケイだったが、家計が許さず就職するしかなかった。

外資系の大手の会社に就職が決まり、高校を卒業すると夢と希望を抱いて勤務地である都会で一人暮らしを始めた。


高校で彼女はできたものの、手さえつないだことのない関係であった。

その彼女と遠距離恋愛になった。その頃もちろん携帯電話など普及していなかったので、手紙のやり取りが二人の気持ちを繋ぐ唯一の証だった。しかし、距離が二人の気持ちさえも引き離し、彼女に好きな人が現れこの恋愛はあっけなく幕を閉じた。


ケイが二十歳になる頃、ケイの会社と取引会社合同主催のリクレーションでハイキングがありケイも参加することにした。そこに、取引会社に努め、今、離婚訴訟中の戸籍上の妻ヨウコも参加した。彼女は元々は参加しないことになっていたが、参加するはずの女の子が急用で参加できず、そのピンチヒッターで参加しケイとヨウコは出会った。


これが、そもそもの間違いの始まりだったと言って良い。


その後、付き合うということなく二人は遊びに行くようになった。

モラハラをする人間は自覚はないと言うが、まさにヨウコもそうであった。


ヨウコは数年前に父親を亡くし、兄弟はなく母親と二人暮しだった。

父親は外に愛人をつくり家を省みなかったようだ。母親と自分が苦労したことをケイに話しケイの同情心をくすぐった。


(この時からモラハラが始まったたように私は思う)


付き合っている間、常識的な考えを持ち話し、異常さを全く感じさせることはなかった。我が侭を言うもでもなく、気の強ささえケイに見せることはなかった。そんなヨウコに次第に惹かれて行くケイであった。


ヨウコは獲物を前に、モノにするまでは自分の内に秘める全ての感情を押し殺すことなどなんともなかったのだろう……。