仁王立ちの夫。
怒りが頂点に達しているのが見て取れる!
「何時だと思ってるんだ!」
「朝帰りしたわけじゃないし、何も隠さないといけないようなことしてないんだからいいじゃない!」
謝る気など全くなかった。どうして、この男に従わなければならないのか?!それが先に立っていた。
夫は無言で私の髪を掴みバスルームに引っ張っていった。そして、シャワーを手に水を頭に浴びせるのだった。
好きなようにすればいい。こんな男といるのなら死んだ方がましだ!と、どこか人事のようにされるがままになっていた。
騒ぎを聞きつけ娘が起きてきて、父親を止める。
「やめてよー!」
「こいつが悪いんだ!」自分は決して悪くないと思っている夫。自分を怒らせるのが私が悪く、それは人のせいなのだ。
怒りが収まると、次はああでもない、こうでもないと延々と自分勝手なことを言うのだ。
黙って聞いてるのにも限界がある。
「私はあなたの物じゃない。個なんだよ!一人の人間なんだよ!」
だけど、異常者にはこんな話は通用しない。また、前の話を持ち出してくる。
「こんな生活もうイヤ!離婚してよ」
「何言ってんだ!離婚なんてしない」
こんなやり取りで夜が明けてしまうことも数え切れないぐらいあった。
家を出ても良かったが、何をされるか分からない怖さを感じてそれも出来なかったのだ。
それに、私の親兄弟は夫を真面目な良い人だと信じており、私が何を言っても私の我が侭だとしか取ってもらえなかった。
暴力に関しては親が悲しむだろう、と思って言えなかったので尚更私の我が侭としか思えなかったのだろう。
夫の両親に至っては、自分の息子のことを信じており、義母とは良い関係ができていたので、夫の行いを話すのは憚られた。
私が働くことによって家計も以前よりは潤っていたので辞めろとは強くは言わない狡さを見せた。
この歓迎会のことがあり、所長を良く思っていないのだ。所長は二次会の時には帰っていなかった。それを話しても信じず、所長が引きとめたと決め付けるのであった。時給が上がったのもそんな経路があったからだと勝手に決めてかかったのだ。
夫は人間は成長し変わるということを知らないようだった。知ろうともしなかった。
そんな中、やはりこんな生活は堪えられないと思い、家を出る決心をする私であった……。