佐世保や横須賀などに寄港していたアメリカの原子力潜水艦が、放射能を帯びた水を40年あまり前から、日本の港に排出していたのではないか。日米交渉における極秘の文書が発見されました。
アメリカの原子力潜水艦「ヒューストン」。その黒い巨体に指摘されているのは放射能漏れです。艦内のバルブから2年間にわたって、放射能を含む水がしみ出ていたことが先月わかりました。
佐世保、横須賀、沖縄に寄港していたヒューストン、アメリカ政府は「漏れた放射能は微量で人体への影響はない」としていますが・・・。
「微量とか、しみ出しとかそういう問題じゃなくて、放射能が漏れている自体が問題」(佐世保市議会 松尾裕幸議長)
しかし、問題はもっと以前から存在していました。原子力潜水艦からの放射能放出が、44年前から続いていた可能性があることを示す機密文書。東京在住の核問題研究者らが、アメリカ公文書館から入手したものです。
アメリカ政府が原子力潜水艦を日本に初めて寄港させた1964年、その前の年にアメリカ国務省から東京のアメリカ大使館に送られた電報には、日本政府との交渉経過が克明に記録されていました。
まず、日本政府が領海内で放射性物質を排出しないように求めたのに対し、アメリカ国務省は「(原子炉を)運転を開始する時には、少量の低レベル放射性冷却水を放出する必要がある」と回答するように指示していました。
「異常放射能を含んだ冷却水や核関係物質が、日本の港の中で捨てられること、排出されることがありうるという前提で、原潜が行動していることが浮かび上がる」(核問題研究家 新原昭治さん)
また、別の電報には日本政府が安全性を確保するため、放射能や事故の想定などのデータを提供するよう、再三求めたのにもかかわらず、アメリカ側が一切応じなかったことも記されています。
「原子力潜水艦の安全性を検討することができるように、放射能などのデータを日本政府に提供することが可能でしょうか」(外務省)
「それはできない。すべての関連データは機密扱いとなっている。重要な情報はアメリカ原子力法に基づき、部外秘データに指定されている。しかし、アメリカ海軍のこれまでの経験に基づき、原子力潜水艦の安全性を保証する」(アメリカ政府)
「日本の国民の安全にとっても、ゆゆしき問題がそこに隠されている。日本の自主的な点検が出来ないシステムが、最初から作られている。そこにやっぱり日本国民の安全を冒す危険がはらまれてる」(核問題研究家 新原昭治さん)
当時、アメリカと交渉にあたり、電報に名前が記載されている外務省の元課長・高橋正太郎さんは今も健在で、当時のアメリカの対応を記憶していました。
「今までほかのところでも事故を起こしていないし、安全だと、アメリカは思ってやってるわけでしょ。どうして安全なのかと言っても詳しいところまでは、なかなか言わないね。極端に言えば、言われっぱなしということになるけどね。向こうがそう言うから、そうですかということになっちゃうけど、結局は」(元外務省安全保障課長 高橋正太郎さん)
原子力潜水艦の日本への初寄港をめぐって、日米交渉の舞台裏を示す公文書が発見されたのは、これが初めF$G$9!#
外務省にこの電報の存在について質問しているが、まだ回答は届いていません。
一方、原子力艦船が入港する際、放射能測定をしている文部科学省は、この電報について全く知らないとしていますが、現在はアメリカが日本に対して、きっちりと情報を提供しているとみています。
「今の日本とアメリカとの関係で、我々がアメリカが何かを発見すれば、きちんと情報を伝えるというふうに、彼らも約束してくれているので」(文部科学省・原子力課 木野正登室長)
そして佐世保市民は、電報に書かれた事実を全く知らされていませんでした。
「住民の不安を取り除くためにも、アメリカ側にまずきちんとですね、データの公表を求めるということ、それを国民に丁寧にわかりやすく説明をするという、説明責任があると思いますね」(元衆議院議員 今川正美さん)
電報に書かれた日米両政府の公証をもとに、1963年に両国が交わした覚書では、「基準を下回っていれば、放射能を含んだ冷却水を例外的に放出できる」としており、驚くべきことにこの取決めは今も生きています。
45年前の日米交渉の舞台裏を伝える極秘電報。原子力艦船は必要があれば放射能を放出し、アメリカはひたすら安全だと強調する。当時のその状況は佐世保や沖縄、そして今月、原子力空母が配備される横須賀で、今も続いている可能性があります。(05日23:37)