海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突事故の第1回海難審判は4日午後も横浜地方海難審判庁で続き、舩渡健前艦長(53)らは尋問で、横浜地方海難審判理事所が解析した清徳丸の航路を「ずれている」などと述べ、衝突が予想される位置関係にあったとの理事所側主張に反論した。
舩渡前艦長は理事所が指摘した清徳丸の航路を「もっと南東側だった」と主張。事故当時の当直士官、長岩友久前水雷長(35)も「無難に(清徳丸があたごの)船尾を通過すると間違いなく認識していた」と述べた。
尋問では、長岩前水雷長が当直交代のため艦橋に上る時間が遅かったり、漁船団を艦長に報告していないなど、艦内の「航行指針」を普段から守っていなかった実態も明らかに。審判官の「一番大事なルールがないがしろにされていたのではないか」との追及に、長岩前水雷長は「そういう印象を持たれても仕方ない」と認めた。
88年の潜水艦「なだしお」の衝突事故で、沈没した遊漁船側の補佐人を務めた田川俊一弁護士は傍聴後「あたご側は『回避義務が生じる位置関係になかった』と主張したいのだろう」と分析した。【池田知広、吉住遊】
毎日新聞 2008年9月5日 東京朝刊