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スクール・ランチ

2006年04月20日

 ニューヨーク(NY)の公・私立エレメンタリースクール(日本でいう小学校)にはほとんど給食(普通“スクール・ランチ”と呼んでいる)がある。家から弁当を持参したい人は、たいていそれもOK。

 カフェテリア(食堂)があり、そこで食べるのが通常だが、低学年の場合は教室にランチを運んでもらい、そこで食べるところもある。運ぶのは食堂に勤務する人がやったり、上級生が手伝ったりする場合もある。日本でよく見かける、子どもたちの中の給食当番が白いエプロンと帽子をつけて、自分たちで教室に給食を運び、配膳(はいぜん)する、なんていうのを私はまだNYでは聞いたことがない。

 息子がキンダーガーテン(日本でいう幼稚園年長)に通い始めたとき、このランチメニューの簡単さというか、合理さにちょっと驚いた。

 たとえば、ある1週間のメニュー

☆基本的に毎日置いてあるもの

日替わりスープ(チキンスープ、野菜スープ、クラムチャウダーなど)
サラダ(レタス、トマト、キュウリ、ピーマン、セロリなど)
果物(オレンジ、バナナ、アップル、グレープなど)
サンドイッチ用のパン(全麦もある)
ミルク、ノンファットミルク、チョコレートミルク、オレンジジュース、アップルジュース、水
クッキー、キャンデー、ポテトチップ、ポップコーンなど(これはお菓子だろー、これもありなのかと、驚くやら、感動するやら)

☆基本的に日替わりランチメニューには2種類ある

(月) ホット・ドッグ、グリーン・ビーンズorサラミ・サンドイッチ
(火) チキン・テンダー、ベジタブル・ライスorツナ・サンドイッチ
(水) グリルド・チーズ、ベジタブルズorハム・サンドイッチ
(木)スパゲティ&ミートボールorターキー・サンドイッチ
(金) ピザ&フレンチフライorタコス&フィッシュ・スティック


 朝、急に弁当を持参せずにスクール・ランチに変更しても、お金(公立は基本的なランチは平均2、3ドルほど、私立は割高で4、5ドルほど)を払えば当日すぐにランチが買えたり、子どもが自分で食べたいものを選ぶ(限られた範囲ではあるが)ことができたりなど、このシステムはちょっと新鮮だった。 

  ただ、栄養学をもとに専門機関から出されている学童期の栄養摂取基準に沿って献立は立てられているというが、ファスト・フード的なものが多かったり、ジュースとポテトチップだけで昼食をすませてしまったりしても、とやかく言うものがいない学校(たとえばうちの息子の学校)などは困ったものだ。日ごろ保護者が“食”の大切さを子どもに伝えていたとしても、目の届かない学校のランチの時間に、子どもが何を選ぶかは子どもに任せるしかない。

 「だからうちは、ランチはもうあきらめているの。そのかわり、朝と夜にしっかり栄養バランスを考えて食事を作るようにしている」という保護者もいた。

 「だから日本の給食のようにバラエティーに富んだ食材を使ってきめこまかい献立にし、日本の子どもたちのようにみんな同じランチにしたら、栄養的にばらつきが出なくていいし、食べず嫌いも改善され、肥満を防ぐ糸口になるのではないか」という父母も出てきたわけだ。

 この父母たちはこのことについてNY市に掛け合ったそうなのだが、「予算が掛かりすぎる」ということで、ただ今暗礁に乗り上げているのだとか。

 スクール・ランチは、NYの学校の大きな課題でもあるという。

 (次週に続く)


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    兵藤ゆき プロフィール

    兵藤ゆき

    名古屋市出身。血液型O型。
    東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークに。
     主な著書に「ぶんちんタマすだれ」「ゆき姐のニューヨーク裏うら散歩」「でこぼこなクラス写真〜子どもたちは黙っちゃいない〜」(いずれもワニブックス)、「ニューヨーク熱血井戸端会議」(集英社be文庫)などがある。

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