ニューヨーク(NY)にいると、ものすごーく太った人たちをよく見かける。日本の女の子たちが、「あたし、近頃太っちゃってー」なんて言っているのは、「どこがじゃー」というくらいかわいいもので、こちらは半端じゃない。昨今のアメリカの重大な社会問題のひとつに「肥満」が挙げられるのも一目瞭然(りょうぜん)!という感じだ。これは大人だけではもちろんない。
先日NY市の就学前の児童1万6000人を対象に行った「肥満化」の調査で、27パーセントの児童が肥満であると診断されたそうだ。
幼児期の肥満は、高血圧、脂肪肝、糖尿病などの生活習慣病の予備軍になる恐れや、筋肉、骨への過剰な負担、また成人期の肥満化を促進する可能性があると、NY市の保健委員会からの発表もあった。
息子がNYのプリ・スクール(日本で言う幼稚園年少、年中)に通い始めたころ、ほとんどの子どもたちはランチに“マカロニ&チーズ”や“ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチ”を持ってきていた。これらはアメリカの子どもたちにはとてもポピュラーな食べ物だそうで、父母たちに聞いても、「子どもの頃よく食べたよ」という人が多い。
“マカロニ&チーズ”は、ゆでたマカロニに、ミルク、バター、チーズをこってりと混ぜたもので、スーパーマーケットに行くと、インスタントでできるものもたくさん売っている。
“ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチ”はパンにピーナッツ・バターとジャムをぬったもの。
マカロニ&チーズにしろ、ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチにしろ、あわただしい朝に作るには手っ取り早いランチだ。
教室には電子レンジが置いてあり、昼食時に先生がマカロニ&チーズを温めると、チーズのにおいがプーント漂う。子どもたちは、「わー、おいしそー」とみんな鼻をひくひくさせていた。ピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチのジェリーも、イチゴ、ブドウ、モモ味などがあり、子どもたちはそれぞれ交換し合って食べたりしていた。
担任の教師は若い女性だったのだが、子どもたちの食べ物をとても気にかけていた。
「親はマカロニ&チーズやピーナッツ・バター&ジェリー・サンドイッチだと子どもが食べるから、そればっかりランチに持たせますが、脂肪分や糖分の多いものばかり食べさせていると太る体質をつくりやすい。セロリやにんじん、魚も食べましょう」と、おやつの時間には野菜スティックや魚の燻製(くんせい)などを出していた。
はじめは、「やだー」と言っていた子どもたちも、ひとりが食べ始めて「おいしいー」と言うと、どれどれと面白がって、そのうちあっちでもこっちでもぼりぼりばりばり食べ始め、しまいには取り合いになったりしていた。
その話を聞いた親たちからは、家で何度言っても、どうやったって食べなかったのに、幼稚園では食べると、がっかりするやら、うれしいやらの声。
「子どもはどうしてもほかの子どもにつられますからねえ、学校のほうが食育はやりやすいかもしれませんねえ」と担任の先生は言っていた。
彼女は、日本の給食の素晴らしさにもすごく感心していた。
「だから日本人って肥満が少ないんじゃないんですか?」などとも言っていた。そうとは一概には言えないかもしれないが、近頃NYでは「日本の学校給食をNYの子どもたちにも」という運動を始めた父母たちもいるのだそうだ。
(次週に続く)