はじめに「おわび」です。2号前のメルマガ(7月25日号)で、「毎日新聞英文サイト問題:炎上の根底に『PV至上主義』と『被害者意識』」という記事を掲載しましたが、問題の原因を「PV(ページビュー)至上主義」に求めたのは誤った解釈でした。
下劣な記事の代表格としてよく取り上げられる「日本の母親は受験生の息子の性処理をする」という記事は、2001年4月に「毎日デイリーニューズ」がWebに移行するはるか前、1997年10月5日の“紙”の英字新聞に載っていたものでした(よほど気に入ったのか、Web移行後の2002年1月6日に再掲載)。そして紙の時代から頻繁にこの手の記事が載っていたことも、2ちゃんねる既婚女性板住人有志らの“過去記事発掘作業”によって明らかになりました。
ネットの新聞は紙の新聞に比べて、軽いノリの記事を載せやすい面が確かにあります。そして、どの記事が読まれたのか・評価されたのかが記事1本単位で把握できるため、その傾向を踏まえて好評な記事を増量するなどの対策をすぐに取ることが可能です。そこに「PVを増やして広告媒体としての価値を高める」というプレッシャーも加わってエスカレートしていったのだろうと勝手な解釈をしてしまいました。紙の時代からの“変態”記事垂れ流しが判明したことで、この事件はネット特有の環境がもたらしたのではなく、元から内在する“体質”が原因だったことになります。
さて、お盆の最中のこと、サイバーエージェントの須田伸さんが「日経ビジネスオンライン」(NBonline)で寄稿されているコラム「Web2.0(笑)の広告学」で、
●私は二枚舌でしょうか?〜匿名の価値を認めつつ、怖いとも思ってしまいます。
という記事を書かれていました。
私も記事を書く側ですから「もし批判・中傷コメントが殺到したら…」という気持ちはよく分かります。が、それでもなお「マスコミの方がコワイ」が私の実感です。
なぜかと言うと・・・
先日、ネットの炎上事例に詳しいゼロスタートコミュニケーションズの伊地知晋一さんにインタビューしました。以下がその記事です。
●【毎日新聞“変態”報道問題】おわびは「若手ねら〜社員」に任せろ
実は当初、リスク管理専門のコンサルタントの方にインタビューを依頼していたのですが、実現しませんでした。「匿名でならコメントできるが…」と妙に腰が引けているのです。
理由はこういうことです。マスコミでコメントしたり執筆したりして名前が売れることで企業からコンサルティングの依頼が入るというサイクルが重要な受注ルートになっている。毎日新聞の不祥事についてコメントすることで、毎日だけでなくマスコミ全体から嫌われて露出が減ってしまったら死活問題である、と。
「そんなの考えすぎですよ」とは言えませんでした。ありえない話ではないと思えたからです。普段、不祥事を起こした企業の実例を挙げながら講演や執筆をされている方がマスコミの不祥事には堅く口を閉ざす…、コワイことです(それだけに、毎日の問題点をズバズバご指摘いただいた伊地知さんの見解は貴重です。感謝!)
従来、マスコミの不祥事は同業他社が叩くことで一応の浄化が働いていました。ところが今回の毎日の件はなぜかテレビ・新聞の動きが鈍い。ネットユーザーがそれに代わって台頭したのは必然だったように思えます。
では、2ちゃんねら〜はコワイのか? 一連の毎日バッシングを見て感じたのは、本当にコワイのは誹謗中傷・罵詈雑言の類ではなく、対応の誤りや延焼が続く理由、取るべき具体的な措置をズバリ言い当てている圧倒的に説得力のある正論がそこかしこに見られることです。
これは一般企業にとっても同様です。「やかましい消費者」なんて考えていると、痛い目に合うかもしれません。
最後になりましたがアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦さんが書かれた
も、示唆に富む内容です。合わせてお読みください。
※「日経ネットマーケティング」読者向けメールマガジン8月25日号のコラム記事です。
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