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パキスタン:ムシャラフ大統領、辞任 米の対テロ戦に影響

 【バンコク栗田慎一】パキスタンのペルベズ・ムシャラフ大統領(65)は18日、大統領を辞任した。01年9月の米国同時多発テロ事件後、パキスタンを米国の「対テロ戦争」の最重要同盟国に転換させたムシャラフ氏の辞任で、米国の対テロ戦にも影響が出そうだ。反大統領派は、同国史上初の国会による大統領弾劾手続きを始める予定だったが、ムシャラフ氏はこれを回避した。

 ムシャラフ氏はこの日、国営テレビで演説し辞任を発表。「議会との対立がこれ以上深まらないよう、国益のため自身を犠牲にする」と述べ、国政の混乱が早期に収拾されるよう訴えた。

 辞任を受け、スムロ上院議長が臨時大統領に就任した。憲法の規定では国会が1カ月内に新大統領を選出する。ムシャラフ氏は弾劾に徹底抗戦の構えだったが、国民的不人気から出身母体の軍や旧与党の大統領離れが進み、後ろ盾の米国の支援も失っていた。今後、反大統領派の訴追を避けるため、国外に逃れるとの見方が強い。

 パキスタンは従来、大統領は象徴的存在で、首相が実権を握ってきたが、ムシャラフ氏が憲法を改正し大統領に権限を集中した。現政権与党のパキスタン人民党は、イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派と今後、政治の実権を首相に戻す方針。一方、世俗政党の人民党に対し、シャリフ派はイスラム色が濃いなど違いが大きく、今後両党の間での権力争いも激しくなるとみられる。

 米国はムシャラフ氏辞任を静観する構えだ。だが軍を掌握して対テロ戦争を進めた同氏に比べ、現政府は軍との関係も弱く、対テロ戦遂行に影響が出る可能性がある。

 ムシャラフ氏は陸軍参謀長だった99年10月、当時のシャリフ首相に解任されクーデターを決行。同首相を国外追放した。当初人気を集めたが、米同時多発テロ後、米国の求めでアフガニスタンのタリバン政権支援を撤回、対テロ戦の同盟国となったため支持が急落。昨年、最高裁長官の職務を停止したのに対し民主化を求める声が高まり、2月の総選挙で与党が大敗。政治権力を失っていた。

毎日新聞 2008年8月19日 東京朝刊

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