ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン福島> 記事

シカ捕獲 来年度から

2008年09月01日

写真

「弘法大師堂」とも呼ばれる山頂の避難小屋で手を合わせる監視員の菅家俊史さん=31日、南会津町の田代山

 本州最大の湿原があり、貴重な植物の宝庫でもある尾瀬でニホンジカによる被害が深刻化している問題で、環境省は31日、尾瀬国立公園の特別保護地区でもシカの捕獲ができるよう、来年度から方針を変更することを正式に表明した。福島県檜枝岐村でこの日あった「尾瀬サミット」(座長・大沢正明群馬県知事)で、地元自治体などに明らかにした。(足立朋子)

 「尾瀬国立公園のこれから」と題した報告の中で同省は、シカによるニッコウキスゲやワタスゲなどの食害や、シカの踏み荒らしによる植生攪乱(かくらん)が「放置できない状況にある」と指摘。尾瀬ケ原や尾瀬沼など、同公園内でも特に原生的な自然が残る特別保護地区では「シカを駆除しない」としてきた00年度策定の方針を見直す、とした。

 今後、シカによる被害状況の調査や移動ルートの解明をし、「ハイカーに安全で湿原にも影響がない」よう、捕獲の時期やわなの種類などを検討。そのうえで専門家や関係自治体などでつくる協議会に諮り、方針の変更作業に取りかかるという。

 同省の黒田大三郎・自然環境局長は「被害が出ているのは明らかで、自然と動植物のバランスをいい状態に保てるようにしたい」と話した。

 会議後、檜枝岐村の星光祥村長は「それだけ湿原の被害は切羽詰まった状況だ。手遅れにならないうちに、実効性のある対策に取りかかりたい」と厳しい表情で語った。

 同省によると、尾瀬の湿原でのシカの数は07年の推計値で241頭と、98年の90頭の3倍近くになっている。これまでに檜枝岐の沼山峠や群馬県片品村の檜高山方面から、尾瀬沼や尾瀬ケ原に侵入しているのが確認されている。

 8月半ばに調査に入った福島県尾瀬保護調査会の木村吉幸・福島大教授(動物生態学)によると、尾瀬沼のほとりでは、シカの掘り返しで湿原に水路ができ、尾瀬ケ原では泥炭層がめくれて陥没したりするなど、被害は一層深刻化しているという。

 ◆田代山 山頂では

 尾瀬国立公園の誕生から1年。同公園の一部である田代山ではこの日、地元の南会津町が独自に主催する記念行事はなく、町から委託されて山の監視員を務める菅家俊史さん(57)が一人、弘法大師が祭られている山頂の避難小屋にお神酒を持参、入山者の安全を祈願した。

 田代山の入山者は増加傾向だが、ごみの投棄や杖(つえ)を湿原に刺すといったマナーの悪化も指摘されている。菅家さんは「地元自治体も環境の保全を専門とする組織づくりが必要だ」と語った。山頂には、前日から開催している「自然公園ふれあい全国大会」のエコツアーに参加した人たちも訪れ、「広々として気持ちいい」などと話していた。

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり