アトランタ五輪優勝のナイジェリアと、前回アテネ五輪優勝のアルゼンチン(アトランタ五輪準優勝)の対決は、炎天下の試合となった。
前半からアルゼンチンがナイジェリアゴールに攻め込む。アルゼンチンの攻撃パターンは、守備的MFのフェルナンド・ガゴ、あるいはハビエル・マスケラーノから中盤のフアン・ロマン・リケルメに預け、FWのメッシ、セルヒオ・アグエロ、アンヘル・ディマリアへというのが通常のパターンだが、前半の始めはメッシが中盤まで下がり、ボールをもらいに行き、“2列目”の位置からドリブル突破をしかけ、チャンスを作りに行った。 最初はチャンスを作る場面もあったが、ナイジェリアのDFはペナルティーエリアに人数をかけ、メッシ、アグエロをペナルティーエリアに進入させない。 これによりディマリアがフリーになるのだが、ミドルシュートを打つなどチャンスは作るがゴールを奪うことはできなかった。 ヨーロッパなどのチームでは、「両サイドからのクロスボール」という攻撃があるのだが、アルゼンチンは身長の低い選手が多く、さらにナイジェリアが身長も身体能力も高い選手ぞろいなので、クロスボールをあげることはほとんどない。というよりも、どんな相手にもドリブル突破と細かいパスワークで攻撃し勝利するというのがアルゼンチンのサッカーであり持ち味だ。 前半の中盤を過ぎたころ、「給水タイム」が作られた(後半にも一度あった)。珍しい光景と思われた方もいただろうが、アルゼンチン国内リーグの夏場の試合では当たり前の光景で、時には「ホースによる観客席への放水」をする時もあるほど。 この給水タイムによって、膠着(こうちゃく)した展開が少し変わったが、ナイジェリアのほうがより元気を取り戻し、アルゼンチンゴールに攻撃をしかけ、クロスボールをあげチャンスを作る。しかしアルゼンチンも得点を許さず、前半を0-0で終えた。 後半も前半同様、お互いに攻めあう展開となる。そんな中でも、決定力に勝ったのはやはりアルゼンチンだった。 ナイジェリアの攻撃をアルゼンチンFDがしのぎ、そのこぼれ球を中盤後方でメッシがボールを奪取。すぐさま反転し、ディマリアに縦パス。ディマリアは素早く縦へ突破し、スピードに乗ったままナイジェリアGKが飛び出し、かがんだ瞬間にループシュートを打ち、ボールはGKの頭上を越えゴール。待望の先制点を奪った。 そしてここからは猛攻をしかけるナイジェリアに対し、アルゼンチンが「攻撃しながら守り、時間を使う」という展開に入る。 こうなると、守備的MFであるマスケラーノのキープ力と安定感、ガゴのボール奪取能力の高さが際立ってくる。中でもガゴはこの試合、積極的にスライディングタックルをしかけ中盤でボールを奪っていた。 ナイジェリアもたびたびチャンスを作るが、今大会、正GKのウスタリが負傷したことによって出場しているセルヒオ・ロメロの必死の守りもあって得点を許さない。 そして、ナイジェリアにとって前がかりな展開になった時に怖いのが、リオネル・メッシだ。 メッシはボールを奪い、そのスピードで縦へ突破し、ゴール前に攻め込み、アグエロにラストパスを出した。ゴールにはならなかったが、これによりナイジェリアへの大きな牽制(けんせい)となった。 終盤になると、アグエロに替わり、ホセ・ソサ、ディマリアに替わりエベル・バネガ、メッシに替わりエセキエル・ラベッシが登場。中盤が厚くなった(ちなみにバネガはアルゼンチンのボカ・ジュニオルズでガゴが抜けた後に守備的MFを務めた選手。マスケラーノの加えて一流の守備的MFが3人という、強力な布陣になった)。 アルゼンチンは残りの時間を攻めながらも守りきり、1-0で勝利した。 オリンピック2連覇、通産12連勝と、オリンピックの舞台では無類の強さを発揮したアルゼンチン。今後は2年後の南アフリカ・W杯での悲願の優勝に向けての戦いとなる。 最後に日本のマスコミに苦言を呈したいのだが、メッシに「マラドーナ2世」という言葉を使うのはやめたほうが良いと思う。 「マラドーナ2世」という呼び方はこれまでもオルテガ、ガジャルド、アイマールなど数々の選手に使われており、マラドーナ、メッシ本人もそれを望んでいない。 さらに現在、「正式にマラドーナ2世(マラドーナの息子)」になるかもしれないアグエロがおり、今大会でも大活躍したのだから。 (編集部注)タイトル文字、修正いたしました(8月29日、午前10時34分)
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