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【社説】

雇用開発機構 「解体」ありきは危うい

2008年8月29日

 政府の独立行政法人改革で厚生労働省所管の雇用・能力開発機構(本部横浜市)の解体論が浮上している。労働者支援の政策にそぐわない。雇用の安全網をどう確保するか真剣な議論が必要だ。

 福田康夫首相の雇用政策が迷走気味だ。首相は七月末に社会保障「五つの安心プラン」を掲げ非正規労働者への支援を決めた。また二十九日の総合経済対策でもフリーターの正社員化などを盛り込む方針だ。

 その一方で雇用・能力開発機構の解体論議が進んでいる。首相は今月中旬、茂木敏充行政改革担当相に対して「機構の存廃の結論を早く出すよう」指示した。

 これを受け茂木行革担当相は独法見直しを担当する行政減量・効率化有識者会議の茂木友三郎キッコーマン会長と会談し、同機構の解体を軸とする改革案を検討していくことで一致した。

 一九六一年に設立された前身の雇用促進事業団は炭鉱離職者の再就職に大きな役割を果たした。その後、住宅やスポーツ施設など事業を拡大したが中には無駄なものもあった。温泉付き保養施設など全国二千カ所以上に建設した福祉施設の失敗は記憶に新しい。天下り問題もあり同機構の解体論が出てくることは不思議ではない。

 一方、現在の基幹業務である職業訓練は重要度を増している。

 企業倒産やリストラで失業・離職した人、正社員化を目指すフリーターたちが対象だ。毎年約十七万人が受講している。常に最新設備と指導員の確保が不可欠なため民間教育訓練会社や財政力の弱い自治体ではカバーは難しい。

 また中小企業などで働く人たちの技術力強化の訓練も約十四万人が受講している。「ものづくり」支援は企業側の評価も高い。

 ただ組織は大きすぎる。職業訓練を行う職業能力開発センターが全国六十一カ所、レベルの高い職業能力開発大学校が十カ所、指導員を育成する職業能力開発総合大学校もある。統廃合が必要だ。「私のしごと館」(京都府)は民間委託を本格的に考える時期だろう。

 閣議決定した独法の整理合理化計画は推進すべきだ。無駄な行政の排除にも異存はない。重要なのは最低限の水準を守る「公」の役割を誰が受け持つのかである。

 景気後退で失業者や離職者は増えよう。雇用開拓と労働者の能力向上が求められる。安全網について民と官がどう役割分担するか、しっかりと詰めてもらいたい。

 

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