2004/10/08(金)放送

「時流」 増え続ける児童虐待
今年1月、大阪府岸和田市で発覚した児童虐待事件。骨と皮ばかりで瀕死の状態となった少年が保護されるというニュースに、私たちは大きな衝撃を受けました。その後も相次ぐ虐待事件に歯止めをかけようと、国は児童虐待防止法を改正しました。この改正で、悲劇を食い止めることができるのでしょうか?

■改正児童虐待防止法とは



保坂「きょうは、大阪府警担当の田中徹記者です。最近、児童虐待のニュースが後を絶ちませんね」
田中「全国の児童相談所が2003年度に対応した虐待相談件数は、26569件です。前年より2800件も増えていて、10年前と比べると16倍の数です」
保坂「すごく増えていますね。何か対策は取っているのでしょうか?」
田中「こうした虐待に歯止めをかけようと、4年前に『児童虐待防止法』という法律ができました。この法律では、児童虐待の定義を『身体的虐待』『育児の放棄(ネグレクト)』『心理的な虐待』『わいせつな行為』の4種類に定めました。ちなみに、去年の相談件数では『心理的虐待』が45%と最も多いですね」
保坂「『通告の義務』というのもできましたね」
田中「『虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに福祉事務所か児童相談所に通告しなければならない』というものです」
保坂「さらに、『立ち入り調査』も」
田中「虐待が行われているおそれがあると認められる時は、児童相談所の職員が立ち入り調査を行う権限を明確にしました」



保坂「こうした法律の整備があっても、虐待事件は減らない。そこで、『児童虐待防止法』が改正されて、今年10月から施行されました。その中身を見てみましょう」
田中「虐待の定義を広くしました。例えば、『保護者以外の同居人による虐待を、保護者が見て見ぬふりをすること』も、育児放棄に当たると規定しました。それから、『直接児童への被害がなくても、児童の目の前で夫が妻に暴力を振るうという行為』も、虐待に含まれることが明記されました」
保坂「国や自治体の責任も、より強くなりましたね」
田中「虐待の予防・発見から、児童の保護・自立、親子関係の回復まで、それぞれの段階で行政が関わっていくことになりました。つまり『児童相談所任せではいけませんよ』という意味です」

保坂「『通告義務』も変わったんですね」
田中「通告の対象が、『虐待を受けた児童』から『虐待を受けたと思われる℃剴カ』に範囲が広がりました。つまり、疑わしい℃桙ヘ通告できるわけです」



保坂「こうした法律の改正が、この厳しい現実にどこまで対処できるのでしょうか?」 田中「児童虐待に関しては色々な分野の方が発言をされていますが、きょうは、30年以上児童相談所で虐待問題に向き合ってきた方の話を聞いてください」
【花園大学社会福祉学部 津崎哲郎教授の話】
「相談所の機能が、非常に重視されている。しかし、その機能を遂行するための職員体制が充分でない。今、児童施設が満床状態で、受け皿がない。ということは、保護したくても、保護する場所がない」
「援助について前向きでない親に対して、行政が権限を発動して介入していかないといけない。ところが、介入すると保護者との摩擦が起きて、現場職員のプレッシャーが高まる。トラブル処理に対して、何らかのシステムを作る必要がある」
保坂「やはり、実例に携わってこられただけに、説得力がありますね」
田中「津崎教授の話を要約するとこの2点です。『職員や施設をもっと充実させる』『裁判所が、保護者への命令を出す』ということですね」
保坂「幼い命をどう守っていけばよいのか、私たち1人1人は何ができるのかを考えていくことが必要だと思います」