アフガン日本人拉致事件 大使館員が遺体と対面、日本政府として伊藤さんの死亡を確認
アフガニスタン東部の山中で見つかった日本人とみられる遺体は、26日に拉致された日本のNGO(非政府組織)スタッフ、伊藤和也さん(31)と確認された。
27日午後10時半ごろ、山本一太外務副大臣は「昨日(26日)、アフガニスタンで発生した邦人誘拐事件につきまして、伊藤和也さんのご遺体であるということを確認をいたしました」と述べた。
アフガニスタン東部で26日、NGO職員の伊藤和也さんが武装グループに拉致され、27日夜、日本政府によって死亡が確認された。
午後2時すぎ、「ペシャワール会」の福元満治事務局長は「一番起こってほしくないことが起こったと」と話した。
遺体発見の第一報は日本時間27日午後1時半ごろで、伊藤さんが所属するNGO「ペシャワール会」現地代表・中村 哲医師によって伝えられた。
午後2時すぎ、福元事務局長は「中村から連絡がありまして、30分ほど前、伊藤君の遺体が発見されました」と語った。
午後5時前、伊藤さんの父親・正之さんは「まだ、すべて信じているわけじゃないので。100分の1でも、1万分の1でも可能性があれば、とにかく生きていてもらえればなと、気持ちの中にある」と語った。
ナンガルハル州の警察トップは「わたしたちが遺体を運んだ。残念ながら、犯人が逃げた時、伊藤さんを殺したようだ」と話した。
遺体は、アフガニスタン東部ナンガルハル州とコナル州の境界付近の山中で、警察とともに伊藤さんの捜索にあたっていた村人が発見した。
脚に撃たれたようなあとがあり、顔、頭部にも損傷があったという。
そして27日午後9時すぎ、カブールの日本大使館員が遺体と対面し、日本政府として伊藤さんの死亡を確認した。
山本外務副大臣は「顔やひげなどの特徴、および誘拐前に着ていた衣服をふまえ、ご遺体が伊藤さんご本人であると」と述べた。
伊藤さんは、専門知識を生かし、2003年から現地で農業指導のボランティアに取り組んでいた。
そんな伊藤さんが、なぜ拉致され、殺害されたのか。
27日に明らかになった状況の中に、1つの特徴があると専門家は指摘する。
それは、遺体に残された銃弾による傷が、脚にあったという情報。
中東調査会上席研究員の大野元裕氏は「頭の傷が致命傷となった様子も、あるいはアルカイダがしばしばやったように、首に剣で傷をつけるようなことが見られていません。(処刑など)政治的PRはそこにはなく、もしかすると、偶発的についた傷が、そこから死に至るような結果になったり」と話した。
現地からの情報の中には、事件発生時、伊藤さんを連れた犯行グループと警察の間で、銃撃戦が発生したとの情報もある。
さらに大野氏は、事件の現場となったアフガニスタン東部で今、大きな問題が起こっていると指摘する。
大野氏は「米軍の管轄地域である東部においては、もともとアメリカ軍は、必ずしも受け入れられてませんから。そのために、現金を司令官が与えられて、これを地元部族にばらまいています」と語った。
しかし、この現金の支給は、アメリカ軍に協力する集団や部族に行われ、利益を得られなかった集団の間では、不満などが高まっていたという。
大野氏は「だからこそ、誘拐だとか米軍への攻撃など、過激な思想を持った人々を受け入れるとか、そういったことの温床になってしまっている」と話した。
今回の事件を受け、日本のNGOの間では、現地に展開する日本人スタッフを引き揚げる動きが出ているという。
(08/28 00:32)