インド人役員たちと世話役の倉又さん(中央)=7月26日夜、東京都江東区の大島6丁目団地、鎌田正平撮影
東京の下町にある大島6丁目団地(江東区)の自治会に今春、3人のインド人役員が誕生した。全国公団住宅自治会協議会によると、複数の外国人が一つの自治会の役員になった例は非常に珍しいという。「お互いを知れば、近所づきあいできるはず」。双方のそんな思いが、共生への一歩になった。
「インドバーガー、おいしいですよ」。7月末、団地の納涼まつりで、80を超す夜店の呼び声の中にインド料理を売る声が響いた。今年初めて、団地に住むインドの人たちが3店の夜店を出した。
その中に、自治会役員のヘマント・ウィサルさん(34)、ナレン・デサイさん(35)、ヨゲシュ・プンデさん(35)の姿もあった。都内のIT企業で忙しく働く3人だが、「役員の仕事は新しい経験。面倒とは思わない」(ヨゲシュさん)。
自治会参加のきっかけを作ったのは、同会役員の倉又頼夫さん(74)。2年前のまつりで、広場でたまたま見かけたシャンカー・ナラシンハンさん(34)に、「勇気を出して、『ハロー』と話しかけた」。
インド人学校が近いため、約2900世帯の同団地内に、数世帯程度だったインド人の世帯が、ここ数年で55世帯80人に増えた。それに伴い、自治会には苦情がぽつぽつと寄せられていた。
「夜間、ベランダで携帯で話している」「毎週末、ホームパーティーを開いてうるさい」「(ごみ出しなどの)ルールを徹底してほしい」……。団地に住む日本人は年齢層が高く、生活の時間帯にもずれがあるようだった。倉又さんたち役員は「お互いを知り合わなければだめだ」と思っていたという。
一方、シャンカーさんも近所づきあいのきっかけがつかめずにいた。「日本の人は静かだから、話しかけられたら嫌がるかなと思っていた」