ちくわ笛を吹く住宅正人さん。原料高騰で音程が変わり、悩んでいる=倉敷市本町
原料の値上げなどで大手メーカーが相次いで値上げに踏み切ったちくわが、ちくわを笛のように演奏する岡山県倉敷市の住宅正人(すみたく・まさと)さん(44)の活動にも影響を与えている。「実質値上げ」で音色が変わり、伴奏曲の録音し直しが必要になった。原料高騰の直撃を受け、ちくわに代わる新たな「楽器」探しも始めた。
端に入れた切り込みから息を吹き込み、表面に四つ、裏面に一つ開けた穴を指で開け閉めすると、ちくわから尺八のような重厚感ある音が流れ出す。
趣味で尺八を演奏していた住宅さんは10年ほど前、宴会に出たちくわを興味本位で吹いたのをきっかけに、ちくわ笛を開発。07年に岡山市職員を辞めるまでは、市の観光PRに各地で演奏を披露していた。今はディナーショーやイベントなど年約300回の演奏をこなし、全国を飛び回る。
住宅さんが使うのは長さ約20センチ、直径約4センチのちくわ。演奏地の地元メーカー製ちくわをスーパーなどで買い込み、笛に「改造」する。
音の変化に気づいたのは昨年1月ごろ。以前よりも高音が出るちくわが増えたため、注意して観察すると、全体の長さが短くなっていた。中には、穴の直径が大きくなって音程が変わったり、ちくわが軟らかくなって半音変わったりしたものも。
コブクロの「蕾(つぼみ)」や「ラブ・ミー・テンダー」など、レパートリー約60曲に合わせてシンセサイザーで作った伴奏曲と音程が合わなくなり、半月ほどかけて伴奏を録音し直した。
穴の拡大による“実質値上げ”は、今年に入ってからは実際の値上げに。360円だったちくわが7月には420円になるなど、各地で10〜15%程度値上がりしている。