【北京=福島香織】中国公安省は北京五輪が始まった8日付で、銃の使用と管理強化を命じる内部通達を出していたことが16日明らかになった。地方都市で、警官が銃を違法に使用し、市民を殺傷する事件が多発、市民の憎悪を呼ぶ事件がたびたび発生しているためだ。通達は北京五輪の安全警備を念頭に置きつつも、民衆の怒りにより、現体制の存立基盤が揺るぎかねないとの中国指導部の強い懸念が反映されているようだ。
北京の警察関係者が産経新聞に提供した「最近、頻発する公安人民警察の銃管理使用規定違反による死傷事件についての通達」(8日付)によると、「一部の地方で発生している公務用の銃による死傷事件が公安(警察)機関の名誉と人民警察のイメージを損なう」として、民衆の暴動に対しておびえて発砲したり、派出所の銃を私的な猟に使い誤って農民を撃ち殺した事件などの具体的な例を挙げている。
通達は「警察の銃管理が依然、甘く、誤っているケースがあることが明らかになった」と述べたうえで、「これら事件の教訓は深刻だ。警察は五輪開幕に当たり、その安全確保という重大任務に携わっており、拳銃(けんじゅう)の管理はさらに重要である」と訴えるなど、北京五輪の治安維持に万全の状態で当たるよう指示している。
また、通達は「法に従い、銃の正確な使用を保証するよう要求する。公務用の銃の管理をしっかりと行い、銃の審査・保管を行う人間の資格や携帯登録制度を厳格化し、その使用状況の報告を誠実に実施しなければならない」と指摘。銃の使用状況に問題があった場合、法に従った厳格な措置を行うとしている。
北京では五輪の安全確保という重要任務に当たる警察だが、地方では「腐敗権力の象徴」として、民衆から襲撃を受けることもしばしばだ。警察側が武器で対抗し、官民ともに死傷者が出る事件が多発している。
資料を提供した警察関係者は「警察内部のたがが緩んでいる。人民のための警察の銃が人民を殺傷するなどあってはならないこと」といい、このままでは国民の警察に対する不信感と憎悪が爆発しかねないとの懸念を漏らしている。
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