GMを抜き、トヨタ自動車は今年にも販売台数世界一となる見通しだが、不当労働行為などで組合員による抗議行動が世界各地で広がっている。特にフィリピントヨタ(従業員約1500人、同国最大の自動車会社)では、2001年に解雇を含む約300人の組合員を処分したため、争議が長期化している。
こうした中、フィリピントヨタ労組を支援する会などの支援により3月29日から4月2日まで、エド=クベロ委員長が来日。現状を聞いた。 組合を認めないトヨタ フィリピントヨタ労組を支援する会が日本でも結成されており、中央労働委員会に訴えるなど、活発に活動を繰り広げている。写真はフィリピントヨタ労組エド・クベロ委員長(撮影:林克明) 01年3月16日、労働雇用省長官の裁定で組合が勝利した。ところが裁定が下されたその日、トヨタは組合員227人(後に233人)を解雇、70人を停職処分にした。ここから解雇撤回と団体交渉要求の闘争が始まったのである。 就業時間の前後に4時間の残業 「89年11月、19歳の時にトヨタに入り、車体に色を塗る作業をしていました。最初は見習工として週80ペソの給料(小遣いの名目)をもらいました。私の記憶では当時の最低賃金が週130ペソだったと思います。 この金額でも生活するのが大変でしたから、80ペソでは苦しかった。3カ月後に準社員になり、さらに3カ月後に社員になりました。正社員になると最低賃金を獲得できます。 90年代は、8時間の就業時間に加えて4時間くらいの残業をするのが普通でした。残業は、就業時間の前の朝と終業時刻後の2つにわけられます。 勤務態勢は2交代制で、朝7時~午後4時、午後4時~深夜12時まで。メンテナンス部門では3交代制が導入されており、朝7時~午後4時、午後4時~深夜12時、深夜12時~朝7時となっています。 メンテナンスは、問題がないようにずっと見ていなければならないのです。 朝7時就業開始のときは2時間前の5時に来て準備をし、就業開始前に1時間、作業終了時刻の4時以降は3時間の残業。多い部門は4時間残業ですね」 化学溶液タンクに落下した同僚を解雇 「最初トヨタに入ったときは、世界のトヨタで働けるとうれしく思っていました。でも実際に働き始めると、私にとっては地獄のようでした。 特に労働者に対する安全設備が不備でした。工場の中は非常に暑く、作業もつらかった。工場内は冷房が効いていません。近くにオーブンのような熱源があり、苦情を出して扇風機を設置してもらいました。でも、汗が乾く間もありません。 給水器があって水は飲めるのですが、コンベアーの流れ作業なので、ダッシュで走って水を飲み、またすぐに戻ってくるような状況です。 本当に労働者の権利を守らなければならないと思い、98年に現在のフィリピントヨタ労働組合を結成しました。 その年に事故が起きました。塗装した部分の油をとるために化学薬品を使うので、そのために化学薬品(液状)を入れるタンクがあります。一緒に働いていた仲間が、そのタンクに落ちてしまったんです。 全身の皮膚がはがれるようなひどい火傷(やけど)で、周囲の労働者たちは、どうしていいかわからずパニック状態になってしまった。私が彼を助け出し、背負って病院に連れて行きました。ただれてしまった彼の皮膚が私の体に密着した生々しい感覚を今でも覚えています。 大怪我をしたその仲間は、出勤できなかったので即解雇です。大火傷を負ったので出勤できないのは当たり前ですが……。事故自体がケガをした彼の責任だとされました」 和解金をつむトヨタ、亡くなった人は7人 「300人以上が会社に処分されて、一部は職場復帰したので被解雇者は233人まで減りました。01年からトヨタが一軒一軒まわって和解策に出たのです。それで和解金を拒んだ者が136人。生活は苦しく、親に助けてもらったり、財産を売ったりして急場をしのいでいます。 途中で亡くなった方もいます。これまでに7人。1人は大人で6人は解雇された人の子どもたちです。 病気になっても病院へも連れて行けず、薬も買えず。ある家族は、解雇された後に家賃を払えず、借家を追い出されて田舎に引き上げました。農作業の合間に子どもを遊ばせていたら灌漑(かんがい)施設に落ちて死んでしまったんです。 和解金を受け取らないでトヨタを辞めるはめになったことを奥さんになじられて、子どもを失ったあげく夫婦関係が悪化して離婚してしまった。最終的には和解金を受け取ってしまったが、彼のことを責めることはできません」 正式な団体交渉を持つ組合であると事実上認めたフィリピン最高裁判決(03年9月)を無視し、ILO(国際労働機関)憲章やILO勧告を、トヨタは無視し続けている。 (MyNewsJapanの記事全文の要約です。オリジナルはこちらです)
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