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【断 潮匡人】各局の五輪報道を検証する
このニュースのトピックス:メディア倫理
自局記者らが中国の武装警察に暴行拘束されたと報じた「ニュース・ゼロ」(日テレ)で村尾キャスターは「中国にオリンピックを開催する資格があるのか」と厳しく問うた。民放はもちろん、NHKすら明言しない骨太の正論である。
思わず拍手喝采(かっさい)したその直後、番組はスポーツコーナーへ。女子アナが五輪関連のニュースを笑顔で伝え、せっかくのコメントを帳消しにした。
さらに村尾キャスターは五輪開催にあわせ訪中、開会式を現地から華々しく伝えた。自ら語った正論は、どこへ行ったのか。
他方、TBSの「ニュース23」は開会式の光景に加え、中国当局の異様な「厳戒体制」を紹介。「国境なき記者団」や各国の「相次ぐ抗議」、「チベットに自由を」と叫ぶ声、多数のウイグル人やチベット人が拘束された事実も報じた。米大統領が「海外のオリンピックに参加したのは初めて」と敷衍(ふえん)するなどジャーナリズムの見識を強く滲ませた。
加えて、この機に乗じた「ロシア軍のグルジア侵攻」にも時間を割いた。その内容も、タス通信のごとく「ロシア軍を巻き込んで激しい戦闘に」と報じた「ニュース・ゼロ」と一線を画した。
最悪の報道はNHK。ニュース枠まで取り払い、中国共産党の国威発揚を延々、垂れ流しただけ。各国選手団入場に際し、ミャンマー軍事政権を批判し、北朝鮮には口を閉ざした。正体不明の報道姿勢である。
この日、NHKは公共放送の座をTBSに譲り渡した。(評論家)