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【お産難民を救え 助産師はいま】(6)自治体の格差 無理解が助産所の活用阻む

2008.8.14 07:56

 この連載を行うにあたり、取材班は「助産師」の活用などをめぐり、全国の自治体に調査を行った。その結果、助産所での妊婦健診に公費助成を行っている市区町村が約4分の1にとどまり、負担を行わない自治体の大半が、昨年1月の厚生労働省通知を“誤解”していたことが分かった。

 調査は47都道府県と17政令市を通じて実施。各自治体では、妊婦が妊娠直後から出産直前まで受ける健診費用を一部負担しているが、医療機関だけでなく助産所での受診も負担の対象にしている自治体は25・1%しかなかった。全市町村で助産所を負担の対象にしているのは滋賀、奈良など7県で、逆に京都、岡山など19府県では完全に対象外としていた。

 厚労省は昨年1月、母子の安全のため妊娠中14回程度の公費負担健診を行うのが望ましく、最低でも5回分を負担するよう各自治体に通知した。経済的事情などで健診を受けず、出産間際にいきなり産科に駆け込む「飛び込み出産」が多くなっているためだ。

 しかし、通知には負担対象となる検査について、血液検査など助産所ができない項目が含まれていた。助産所での受診に対する公費負担が一切行われていない19府県のうち、「健診できる助産所がない」とした5県を除く14府県の大半は、「助産所では対応できない検査項目がある」ことを理由にしている。

 厚労省は「通知で示した検査項目はあくまで目安」と説明。昨年6月には、助産所が公費負担の対象になることをあらためて通知したが、「安全確保のため、あえて医療機関のみ対象としている」と、助産師の資格と役割を理解していない回答もあり、自治体側の無理解が助産所の活用を阻んでいる実態が浮かび上がった。

 逆に、福井、兵庫など9県では、市町村による公費負担に独自の上乗せをしているほか、東京、埼玉、長野、静岡、滋賀、奈良、広島の7都県と横浜市では、助産師活用のための独自事業を行い、産科医の負担軽減を図っている。

 ある県の担当者は「少子化対策事業は市町村によってさまざまで、お産の地域間格差は今後ますます広がるだろう」と話す。日本助産師会の加藤尚美専務理事は「行政がリーダーシップをとり、医師と助産師の連携が円滑に進むよう取り組みを進めてほしい」と話している。=おわり

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 この連載は小野木康雄、溝上健良、篠原那美が担当しました。

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