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更新日時:2008/08/13  21:16
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【経済コラム】本家で廃れたレーガノミクスが日本登場-W・ペセック

8月13日(ブルームバーグ):供給側重視のサプライサイド・エコノミク スが時ならぬ登場を日本で果たしている。

アジア最大の経済大国である日本の税制の話題の中心はこれまで、膨張する 福祉コストを賄うための消費税(現行5%)引き上げだった。しかし、法人税の 引き下げを声高に言う動きが強まっており、消費税引き上げ論は影が薄くなるか もしれない。

外国人は長いこと、日本の税制が投資に見合わないと批判してきた。同制度 は新興企業よりも大企業を優遇する構造になっている。税制を幾らか修正すれば、 それがまさに経済成長と投資、雇用創出の起爆剤になるかもしれない。

ただし、一つの障害がある。政治家が減税は元が取れると主張していること だ。しかも、故レーガン元米大統領のように。

中川昭一元自民党政調会長は先週、「目先の税収が落ちても経済が良くなり、 企業が元気になれば本来の税収を取り戻すことができる」とブルームバーグ・ニ ュースとのインタビューで語り、法人税の実効税率を30%程度に引き下げる具 体策を挙げた。同税率は現在40.7%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国 中で最高。

日本のリセッション(景気後退)入りが懸念されるなか、福田康夫首相も 11日、「現下の経済情勢はなかなか大変なものがある」と述べており、中川氏 のような考え方は勢いを増しそうだ。問題は、この考え方の根底にレーガン元大 統領の経済政策だったレーガノミクスがあることだ。

「ブードゥー・エコノミクス」

レーガン政権下の減税で巨額に膨らんだ債務問題に米国がやっと取り組ん だのは、1990年代のクリントン政権だった。その債務縮小に向けた進展を今度 は、ブッシュ現大統領が大型減税でぶち壊した。2009年度(08年10月-09年 9月)の米財政赤字は過去最大の4820億ドルとなる見通しだ。

それでも11月の米大統領選挙の共和党候補指名が事実上確定しているジョ ン・マケイン上院議員は、納税者負担のさらなる緩和を当選の公約に掲げること をやめない。同議員も、そして一部の日本の政治家も魔術の力を借りた「ブード ゥー・エコノミクス」と呼ばれたレーガノミクスを信奉しているのだ。

ほかに結論が出ないのだろう。米金融当局が巨額の融資を提供して金融機関 を、議会がファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸 付抵当公社)をそれぞれ支援し、米銀JPモルガン・チェースによる米証券ベア ー・スターンズの買収を当局が後ろで支えたりするようなご時世だ。このコラム で以前指摘したように、米国は1997年のアジア危機で批判した政策を自ら実施 している。

注意深く実施すれば、日本は経済の多くの分野の規制緩和や政府出資企業の 民営化から利益を得るかもしれない。つまり、多少のレーガノミクスとサッチャ ー元英首相が指揮したサッチャリズムを少々取り込む政策が日本にぴったりの 可能性がある。主要7カ国の中で、日本はかなりの過保護国家で、サッチャー元 首相が1980年代に振るった政策を嫌うだろう。それでも方向性を変えれば、日 本は世界の金融センターになれるかもしれない。

行き過ぎはご法度

肝心なのは行き過ぎないことだ。日本の経済には二面性がある。政府の役割 が繁栄して安全で比較的平等で環境も安定して教育が行き届いた国づくりにあ るとみるなら、日本は驚異的な成功例だ。一方、投資を受け入れ、健全なリター ン(投資収益率)を提供する経済にするのが政府の役目とみるなら、評価はずっ と低くなる。

欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のマンデルソン委員(通商担当) は4月、日本を先進国で「最も閉ざされた市場」だと評した。英投資ファンドの ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)も同じ見方かもしれ ない。同社は7月、約6カ月に及んだ日本政府との争いを経て、Jパワー(電源 開発)株の買い増し中止命令を受け入れた。

しかし、減税策には歳出カットを伴う必要がある。11年度までにプライマ リーバランス(基礎的財政収支)を黒字化させるとの公約を日本政府が守れるの か、債券投資家は注目している。できなければ、利回りは上昇し、格付け会社で の懸念が高まるだろう。急速な高齢化と世界でも有数の低出生率という二重苦を 抱える日本の長期的な問題が一層複雑にもなる。

日本が慎重に動かねばならない理由はもう一つある。小泉純一郎元首相の政 策に対する幻滅感だ。同元首相は01年から06年にかけて、無駄な歳出を削り、 富裕層向け減税を実施し、郵政民営化を進めたが、世論調査はこうした変革を懸 念する動きが増していることを示しており、国民は貧富の差が拡大していると感 じている。

6月の失業率は4.1%と、3カ月前の3.8%から急上昇。過去数年、大して 上がってなかった賃金の伸びも鈍化している。残業代やボーナス含めた6月の賃 金は前年同月比で0.6%減少したほか、経団連によれば、大手企業のこの夏のボ ーナスは02年以降、初めて減った。

少しのレーガノミクスなら悪くないだろうが、赤字削減の邪魔になるほどの 減税策は日本が取るべき選択肢ではない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストで す。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

更新日時 : 2008/08/13 15:18 JST



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