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泉二のひとくち対談

第9回 : dye works Foglia 仁平 幸春 さん (染師)

今回のお客様は、新宿で独自の染工房を主催している仁平幸春さんです。 当社とは「和織」店舗開店前からのお付き合い。今回の4丁目新店舗では、「春夏秋冬」の襖を染めていただきました。 今回は、9月24日(金)から30日(木)の1週間、ぎゃらりー泉と和染で個展を開催します。

<仁平 幸春 プロフィール>

昭和40年生まれ。都立工芸高校デザイン科卒。
染織作家に師事し一方で小学生時代からの料理好きを活かし、居酒屋、和食店で料理修行を続ける。
イタリア料理ではシェフの代わりを務めるまでになる。
が、イタリア料理を極めるうちに自分の中に日本人としての意識の強さに気付く。
「日本のものを素直に極めていく」ことを決めて、染の世界に入る。
現在は、フォリア主催。独自の染の世界を作っている作家。

「銀座もとじとの出会い」


泉二: こんにちは!改めて仁平君と対談って言うのもなんか気恥ずかしいね。

仁平: そうですね。なんかこそばゆいです。

泉二:  仁平君と出会って何年になるかな?

仁平: もう5年半、いや6年くらいでしょうか?
ちょうど和織店を出される前でしたよね。
初めて飛び込みで自分の作品を持って営業に伺ったとき「もうすぐ織の専門店を造るんだよ。」って仰っていましたから。
一蹴されちゃうかと思っていたら「作品を見せてって」仰って。 持って来たものを出していったら「なかなか面白いじゃないか!気に入った!!」って言ってくださって 直ぐに数反買ってくださったんですよ。

泉二: そうだったね。当時から素材と作風には拘っている感じがあったよね。
話し出すと凄く理論的って言うか、小難しいっていうか(笑)。
僕みたいに単純な奴は、理解するのに時間が掛かるからついつい勘で「理屈は良いよ。見てよければそれで良い」って 言う感じでね。

仁平: やっぱり当時から着物業界では「銀座もとじ」って言うとステータスがありましたからね。
買い取って置いてもらえる事は嬉しかったですね。

泉二: 2年目くらいからかな、結構扱うようになったのは?

仁平: そうですね。
その間はちょこちょこ出来たら作品を持ってきて見てもらって気に入ったら取ってもらうって言う状態で。
2年経った頃から「太いお付き合い」(笑)をさせていただくようになりました。
和織店が出来て和織に僕の作品を置いてもらったときは、正直、「僕の作品が映える」と思いましたね。
和織の空間と僕の作品が良い意味で響きあってくれるような・・・・そんな相乗効果を考えました。

「泰明小学校の柳染め授業」

泉二: 私が地域理解教室って言うことでかれこれ7年前から続けている 泰明小学校での「銀座の柳染め」の課外授業を昨年から一緒にしてもらっているんだけど参加してみてどう?

仁平: 子供たちと一緒に草木染に関われるのは嬉しいし、楽しいですね。
子供の反応はストレートですからこっちも本気になるし。 それに物事の出来る成り立ちを見せられるって言うのは凄く良いことだと思うんです。
今の世の中、全て出来上がっているものに囲まれているじゃないですか。それが当たり前に成っている。
人間が使えるようになるまでにどんな工程が施されているか、分からないし、理解する機会も無い。
でも「柳染め」を体験すると、たとえば一枚の柳染めのハンカチが自分の手元に来るまでにどういう経緯を辿るかが分かる。 暑い中、虫まみれになりながら柳を実際に剪定して、それを細かく切る。何時間も柳を煮る。実際は煮るのは泉二さんのお店で社員の人がやっているから子供たちは煮ないけれど、 その液の臭さは、出来上がった柳の染液で分かる。皆顔をしかめているし(笑)。
ハンカチを染めるのには、染液をちょっと温めないと柳の色が良く出ないので室内で暖める。 火を使うと暑いですしね。6月の蒸し暑い日に汗を掻きながら、そこで何度も染める。 そうしてやっと染め上がる。洗って、乾かして、アイロンをかけて・・・ 初めて自分が使えるハンカチになる。この工程を知るっていうことは凄い価値だと思いますね。

泉二: そうだね。 子供たちがひとつひとつ体験するたびに、その物に対して凄く愛着を感じてくれるのが分かる。 柳の葉っぱ一枚を貴重にしてくれる。生きているものや命の大切さをひしひしと感じてくれる。それは凄く嬉しいよ。
だから仕事を放りだしても(笑)、損得勘定を捨てて、続けてきたんだけどね。

「新店舗のふすまを染めて」


泉二: さて、4丁目に4月にオープンした新店舗の「四季のふすま」を染めてもらったのは 仁平君なんだけどこの仕事どうでした?

仁平: チャレンジすることは好きだし、こう言うプロジェクトチームに加われるのは嬉しいと思いましたね。 「やってやろう!」って意欲が沸きました。 ただひとつ心配だったのは、「草木染で植物繊維を染めると退色がどうしてもある」と言うことですね。 それがどの程度になるかというのを図るのが難しかったですね。

泉二: 関わってどのくらい掛かったっけ?

仁平: 染めたのは2週間くらいで一気に染めましたけど、 それまでに打合せやら色出しやらで、2ヶ月は掛かりましたね。

泉二: 本当に良い色に仕上がったよね。

仁平:  いや、本当に。でもこれってプロの仕事の凄さだと思いました。 僕が紙を染めただけでは、何もならない。僕が作った染和紙を、生かした形で纏め上げて下さった、 総合プロデューサーの稲生さんの度量の広さがあったからであり、 鈴栄さんという素晴らしい経師屋さんが居たからこんなに立派に貼りあげてくれた。 久しぶりにプロ同士の仕事に関われた「高揚感!!」を感じましたよ。 携わらせてもらって本当に良かったです。本当に、勉強になりました。

泉二: いやいやこちらも凄く良い仕事をしていただいて感謝ですよ。

仁平: 有難うございます。 これにはやっぱり、泉二さんが何かを僕に押し付けることなく、いつも自由に泳がせて下さるのが 良い作品つくりに繋がると思うんですね。かなりリスキーでもあることを、耐えて下さっている。(笑)
それに関わって下さる人たち、泉二さんを筆頭に、スタッフの方たちや、泉二さん関連のプロフェッショナルな人たちによって、 形になり、生かされるんですよね。 そういう場を与えて下さっていることが今の僕にとって、「本当の現場の勉強」になるのでありがたいことだと思っています。 ホント、泉二さんのフトコロの深さに感謝です!

泉二: ありがとう!そう言ってもらうと僕も嬉しいです

「今回の個展のテーマは」

泉二: ずばり、今回の個展のテーマはなんですか?

仁平: また色々言うと理屈っぽいって言われちゃうけど(笑) 「抽象的な素材感を強調したもの」と「更紗」です。「素材感」って言うのは「生地」ももちろんですが、 「ろう」や「草木染めの染料」などの素材感ですね。 「更紗」に関しては、インド更紗とかではなく他の人とは違う更紗を作り続けています。 更紗の地域性はきちんと何処かに残しますが、それだけではなく現代の日本と言うフィルターを通して 僕は作りたいんですね。

泉二: また難しいね。説明するのが大変だ。(笑)

仁平: あはは!だから僕の場合は僕が話すより作品を見てもらう方が良いんです。 作品をストレートに見て気に入ってもらえたらそれでいい。 理屈で説明するのが難しいんだけど、全体的に染という物を見て欲しいんですね。 染めることによって白生地で見えなかったものが見えるんですよ。 僕がいつも言っているのは「染物は絵ではなく文様である」と言うことです。 仁平は、「白生地+天然染料+仁平の感覚」の三者の攻めぎ合いによって生まれるものなんですね。 そうして生まれたものが、使われる環境で良い響き合いをしてくれるのがもっと嬉しいんです。

泉二: ようするに、仁平君はいつも余計なものをそぎ落として染に向かっているんだよね。 だからどこか力があるようななにかを訴えるような印象があるんだと思っている。 今回も個性的で素晴らしい作品が並ぶことを楽しみにしています。 今日はありがとう!9月24日(金)から頑張ってな!!

『仁平 幸春』の染の世界展

日時: 平成16年 9月24日(金)〜30日(木) 午前11時〜午後7時まで
場所: ぎゃらりー泉 & 和染
会期中、24日(金)、25日(土)、30日(木)は、仁平幸春氏が会場にいらっしゃいます。

※ 仁平幸春公式ホームページはこちらから

[対談日:2004/09/14 筆:荒井]

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