北京から南東へ120キロほど離れた天津で、7日にあったサッカー男子1次リーグ日本―米国戦を観戦した。
真新しい天津駅に新幹線で着き、会場のオリンピックセンター体育場へ向かうべく車を探す。北京の駅では比較的整然と並ぶタクシーだが、ここではそれぞれが勝手に客引きをしている様子。おまけに軒並みの乗車拒否。どうやら彼らにしてみれば「近すぎる」ということらしい。車で30分以上かかると聞いたのですが……。
なんとか車を見つけたものの、会場のだいぶ手前でおろされる。炎天下をとぼとぼ歩き、大きな入場ゲートにたどり着く。
ここで手荷物検査が行われ、かなり緊張しながら列に並ぶ。厳しくチェックされているのがペットボトルなどの飲料だ。「一口飲んでみせれば大丈夫」とのうわさを信じ、その通りにしてみたが、厳しい口調で置いていくように言われ、あっけなく放棄……。
収容人数6万人というスタンドに入った。「セキュリティー」と書かれた白いポロシャツを着た人たちがコンコースの休憩席を軒並み占領して休んでいる。制服姿の警官はそれほど目立たなく、前日の女子の試合よりは、ずっと少ないらしい。
日本人の姿はあまり目立たないが、当初はダメともいわれていたユニホーム姿も問題ないようで、青い日本のジャージー姿がちらほら見える。日本の試合でもおなじみの様々な横断幕がスタンド最前列に掲げられている。
浴衣姿の女性3人組みがいた。新潟市から来たという3人は、独W杯も観戦したそうで、反町監督を応援しているという。涼しげですね、と声をかけると「こんな格好でもすごく暑いのよ」。そうなのだ。発表では気温こそ30度だが、湿度は80%と、会場は霧がかかったように湿気でかすんでいる。このものすごい湿気で汗が止まらない。服が体にまとわりつく。ビールでも飲みたいが、我慢した。
さあ、いよいよキックオフ。スタンドの席は前半は日本の攻撃を見られる位置。日本は果敢に攻めるが、好機をなかなかものにできない。
試合で一番気になっていたのは、客席のほとんどを占める中国人観客の反応だった。また以前のようにブーイングでもされたらどうしよう、けんか腰で詰め寄られたらどうやって対応しようか…などと心配していたが、全くの取り越し苦労だった。
反町ジャパンの身をはったディフェンスや惜しいシュートにスタンドからは大きな拍手がそのつどわき起こる。思いも寄らぬ反応に、「ひょっとして日本びいき?」などと思い始める。前半20分、右CKからの絶好の好機に森重がシュートをはずすと、周りの中国の人たちはバンバンといすを打ち鳴らし、「ああ〜」と大きなため息をもらした。「間違いない。この人たちは日本を応援している!」と勝手に確信。一緒に応援を楽しんだ。
後半に入り、米国の攻撃を見る位置となると一転、米国の攻勢に拍手を送る観客たち。不思議になって、いったいどっちを応援しているのか、隣の観客に聞いてみる。「そんなのもちろん中国だよ(いや、どちらか聞いてるんですが…)。面白いプレーが見られたら、それでいいよ」との答え(お互い、身ぶり手ぶりなので正確ではないです)。どうやら、純粋にサッカーを楽しめればいいということらしい。それはそれで、先入観抜きで楽しめるほど、天津の人たちはサッカー慣れしているのかもしれない、と納得して会場を後にした。