中国製冷凍ギョーザ中毒事件で、製造元の「天洋食品」(中国・河北省)が事件後に回収したギョーザを食べた中国人が6月に中毒を起こしていた問題で、高村正彦外相は7日、毎日新聞などのインタビューに応じ「7月初めに報告を受けた。中国から捜査に支障をきたすので公表は差し控えてほしいと言われ、捜査の進展を期待して公表しなかった」と述べた。国内で大きな被害が出た食の安全にかかわる問題で、中国への配慮を優先して重要な事実を公表しなかったことになる。
高村外相は「わが方に有利な情報を中国が伝えてきたことは多とする」と述べ、中国の警察当局が「中国国内での混入の可能性は極めて低い」と発表した内容と矛盾するにもかかわらず、日本に情報を提供した姿勢を評価した。その上で、中国側が公表を差し控えるよう「しばり」を要請してきた点を「情報の世界では、提供者がしばりをかけた場合、よほど特殊な事情がない限り従うことが大原則」と、公表しなかった事情を釈明した。
日本政府内では「一定の範囲内で情報を共有していた」と強調。首相官邸などとも連絡しながら対応してきたことも明らかにした。
中国から通報があった直後の7月9日には北海道洞爺湖サミットで日中首脳会談が行われたが、外務省幹部は「福田康夫首相は会談の時点で事実関係を知っており、念頭に置いて会談でギョーザ問題を取り上げた」と説明している。
こうした政府の対応に、民主党など野党は衆参両院の委員会の閉会中審査を求めるなど問題視する構えを見せている。民主党の鳩山由紀夫幹事長は7日、横浜市での会見で「事実は事実として公表すると日本政府として主張すべきだ。国民の視点に立った政府とは言い難い」と批判した。【古本陽荘、野口武則】
福田康夫首相は7日夕、首相官邸で記者団に対し、中国製冷凍ギョーザによる中毒事件が中国国内でも発生したとの報告を受けた時期について「北海道洞爺湖サミットのころ。最中だったかな」と述べ、7月7~9日のサミット期間中だったと明らかにした。その上で「進展があったようなので『問題解決に向け中国側の努力を期待する』と要請したい」と述べ、8日の中国・北京での日中首脳会談で議題とする考えを示した。
中国側から報告を受けながら公表しなかったことについて、首相は「中国側の取り組みに協力するということだ」と述べ、中国側の捜査への配慮を示唆した。一方、政府高官は「報告を受けたのはサミットの直前だったと思う。中国側は中国国内で毒物が混入したとまでは言っていないが、その可能性は高いと思う」と語った。【木下訓明】
毎日新聞 2008年8月8日 東京朝刊