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日本での反応は?日中韓共同編集『未来をひらく歴史』完成

山本千晶2005/05/28
「日中韓の歴史認識の溝をうめ、信頼と友好に基づいた対話の前提をつくる」ために3国で共同編纂された歴史の副教材が完成した。すでに韓国では高い注目を集めている。
東アジア 教育 NA

 「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書のオルタナティブ(代替案)として、日中韓の教育者たちが3年をかけて編纂してきた歴史の副教材が26日に完成した。タイトルは3国共通で『未来をひらく歴史』という。

 「日本と中国・韓国の歴史認識の溝をうめ、信頼と友好に基づいた対話の前提をつくる」(日中韓3国共通歴史教材委員会)ことを望んで作られたこの本の初版は2万部。通常、こうした性格の本の初版は2,000部から5,000部程度と言われるだけに、できるだけ広めたいとする関係者の意気込みが伝わってくる。

 日本側の委員の1人である都留文科大学の笠原十九司教授は「ナショナリズムが一番やっかいでした」と、第6次原稿が作られるまでに検討を重ねた過程を振り返る。「日本にもナショナリズムというものはありますが、中国、韓国では特に民族意識が強くてですね、その認識をどう乗り越えるかに悩まされました」

 確かに韓国の歴史教科書などは、客観的な事実を記述しようとする日本の教科書に比べ、民族を強く意識した記述が多い。共同作業の過程でも、特に日中の間では細かい記述をめぐっての衝突も、少なからずあったという。「でも、ぶつかったからと言って背を向けるのではなく、そこから前を見ることが大切」(笠原十九司教授)と、ともに歩み寄る姿勢を保つことを共通点にして、作業を続けてきた。

 こうして完成した本は、まず韓国で25日、記者たちにお披露目された。日本と中国からも委員会のメンバーが出席し、「ほとんどすべての大手メディアが取材に来ていたのではないか」という程の注目を集める中、中国のメンバーが日本側に感謝の言葉を述べたという。

 「記者会見の席でですね、中国側のメンバーが、『今回の作業では、日本側が一番苦労したのではないかと思う。その努力について感謝したい』と言ってくれましてね」と、連絡調整役を担った俵義文氏(子どもと教科書全国ネット21事務局長)は目を細める。

 韓国では、盧武鉉大統領も記者会見の場にビデオメッセージを寄せるなど、『未来をひらく歴史』に寄せる期待と関心は非常に高いという。諸般の事情で中国での発刊は6月上旬になる予定だが、「従軍慰安婦」「南京大虐殺」「創氏改名」など、日本では争点となる事項についても、かなり明確な記述がなされており、日本での注目度が気になるところだ。
◇ ◇ ◇
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(左から)笠原十九司・都留文科大学教授、俵義文・子どもと教科書全国ネット21事務局長、大日方純夫・早稲田大学教授
完成を発表する日本メンバー
(左から)笠原十九司・都留文科大学教授、俵義文・子どもと教科書全国ネット21事務局長、大日方純夫・早稲田大学教授
日本での反応は?日中韓共同編集『未来をひらく歴史』完成 | 大日方氏は、日中韓3国共通教材日本委員会の委員長を務めた
大日方氏は、日中韓3国共通教材日本委員会の委員長を務めた
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『未来をひらく歴史』

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[8225] 俵義文氏、ですか……。
名前:星一成
日時:2005/05/29 12:39
>連絡調整役を担った俵義文氏(子どもと教科書全国ネット21事務局長)は目を細める。

俵義文氏、ですか……。

「何か、不気味な集団(パナウエーブ)と「つくる会」などが結びついているという、空恐ろしい話です」

「つくる会に賛同する署名が100万票とか言いますが、世界から見ればごく少数です。世界の流れはうんたらかんたら」
            ↓
「政治家はつくる会に反対した署名、数(忘れました)万票の重さを深刻に受け止めるべきだ」

の方ですよね……。

なんかもう、それだけでお腹いっぱいですが……一応目を通しておきましょう。



[返信する]
[8215] あぁ、惜しいったらありゃしない。
名前:東堂一
日時:2005/05/29 06:24
> 確かに韓国の歴史教科書などは、客観的な事実を記述しようとする日本の教科書に比べ、民族を強く意識した記述が多い。共同作業の過程でも、特に日中の間では細かい記述をめぐっての衝突も、少なからずあったという。

小生は、「客観的な歴史教科書」も「民族意識(主観的)歴史教科書」も(各国のお国柄に合わせて)あって然るべきと感じています。
アラブ諸国の歴史の中には、“パレスチナが占領された”はあっても“イスラエル建国”は書かれてさえいない書物もあります。でも、近代史には“イスラエル”が頻出し、まるでイスラエルは突然、しかも強国として歴史に登場したかのような印象を受けます。
アメリカでは“原爆”ですら「正義のための仕方ない犠牲」であり、中国にとっては、チベットは“宗教的専制政治から解放”されたのですから・・・・

閑話休題
日中韓においては地理的・歴史的な密接さの中で“主観・客観の差”が摩擦を生じさせてきたことも事実でしょう。(日本側執筆陣がもっとも苦労したとして中国サイドから“多謝”とされたことは、その証左でもあります。)

しかしながら、日中韓3国の歴史学者が一同に会し、未曾有の歴史討論を行った目的が「新しい歴史教科書」を潰す目的(代替案)でしかないというのは、甚だ寂しいですね。
> 客観的な事実を記述しようとする日本の教科書
“客観的記載を望む日本サイド”ではなく、上記記述になったあたりや、記事冒頭の書き出しを合わせて考えると、記者は扶桑社の歴史教科書が“客観的”と認めているような印象も持ちました。(笑)

どうせなら、正々堂々“作る会”と論戦を張り、何年掛かっても真実を炙り出す努力をして欲しかったと思います。

本を読む前に書評はできませんので、今回はこれまで。
[返信する]
[8200] やっぱり日本側での発表は物足りない
名前:京本大輔
日時:2005/05/28 17:18
韓・中・日共同歴史副教材『未来をひらく歴史』が生まれる!http://www.janjan.jp/world/0505/0505267526/1.php

韓国OhmyNews版の記事と比べ、日本側の発表では詳細が伝わってきません。

> 確かに韓国の歴史教科書などは、客観的な事実を記述しようとする日本の教科書に比べ、民族を強く意識した記述が多い。共同作業の過程でも、特に日中の間では細かい記述をめぐっての衝突も、少なからずあったという。「でも、ぶつかったからと言って背を向けるのではなく、そこから前を見ることが大切」(笠原十九司教授)と、ともに歩み寄る姿勢を保つことを共通点にして、作業を続けてきた。

と曖昧に言うのでなく、「人肉餃子」は客観的証拠がないから記述しなかったが、「三光作戦」は〜という客観的証拠があったから記述した。
とか
日中開戦はこれまでの研究ではどちらが始めたか判っていなかったが、〜という証拠の提示がありこれまで知られていない発見があったため日本がおこしたと記述した。
とか
中韓からの〜という論理により日本への無差別爆撃は正義の戦争という概念から記述すべきであると判断した。
とアピールすべきではないのでしょうか?

それをしないのはたいした証拠や発見も無いのに「歩み寄る姿勢」を維持するためだけに中韓側の記述を取り入れた後ろめたさがあるのでしょうか?もしそうなら、そのような教材を胸を張って子供達に使わせることが出来るのでしょうか?
内容に関して、編纂者からの詳しい解説を行って欲しいものだと思います。

なお、前述の記事中のコメントでも意見させていただきましたが、私はこの資料が「中国・韓国」でどのくらい使われるのかということに関しても大変興味を持っています。そこに、両国の歴史教育に関する考えかたが表れる思うからです。その点に関しても後日報告があることを楽しみにしております。
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