先月下旬、議会が不法移民取り締まりに関連する一連の治安対策法案を可決。不法移民による犯罪の刑期を一般市民よりも長くするなどの内容。与党連合の一角を担う北部同盟のマロニ内相らは「ロマ人居住地が犯罪の温床になっている」と話し、居住地解消と不法滞在者の送還を掲げる。
イタリアでは、ロマ人男性によるとされる昨秋の強姦(ごうかん)致死事件で不法移民問題がクローズアップされ、厳しい移民政策を掲げた中道右派が4月の総選挙に圧勝した経緯がある。政府はさらに、欧州連合(EU)加盟国民であっても「治安に深刻な脅威をもたらす」と判断されれば国外退去処分を可能にする法案づくりを進める。ルーマニアのEU加盟で同国からのロマ人流入が急増したと政府はみているためだ。
こうしたロマ人政策に、欧州の人権機関や市民団体からの批判が噴き出している。
欧州会議のハマーバーグ人権委員長は7月末、イタリアの一連の政策に関する調査報告書を発表。「政治家が排斥感情をあおっている」と警告した。実際、ロマ人を標的にした暴力事件が起きている。
イタリアのここ数年の移民の増加率はEUでも目立って高く、社会の変化に国民の戸惑いもある。ロマ人団体「UNIRSI」のバロ・チズミッチ事務局長(40)は「経済停滞など国民の不満に移民に厳しい政権の誕生が重なり、我々は社会のスケープゴートにされている」と話した。(パリ=国末憲人、ローマ=喜田尚)