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発信箱:若い世代の戦争論=岸俊光(学芸部)

 いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる東大の国際法研究会に参加させてもらった。学内外の研究者や実務者が報告したが、気鋭の国際法学者の見方に驚かされた。「最近の韓国の若い人たちは、この問題を戦争と無関係な犯罪と考えている」というのだ。

 慰安婦問題で争われてきたのは国の関与の有無だった。政府補償を求める側と、国の関与を否定する側。こうした「左」「右」の主張と一線を画し、93年の河野洋平官房長官談話をよりどころに旧日本軍の関与を認め、謝罪したというのが政府の立場である。

 ところが、問題はいまだにくすぶり続けている。この日も、韓国の女子留学生が冷静な議論の難しさを率直に語る姿が印象的だった。

 後日、冒頭の事例を紹介した国際教養大講師の豊田哲也さん(38)に話を聞いた。

 「日本の若者にも、戦争犯罪とは戦争が作り出したものではなく、どさくさに紛れて行われた犯罪と感じている人が多い。まして韓国の人が、慰安婦問題は戦争の問題だから解決済みと納得することはないでしょう」「ネット社会の若者には、国際的な問題を国家間で解決するという国際法の枠組みが理解できない。犯罪者を処罰しろ、被害者の権利を政府間で勝手に放棄するなと単純に考えるのです」

 若者たちは歴史をよく知らないのだろうし、論法が正しいとは限らない。しかし戦後63年を経て、普通の人の感覚に応える説明はますます求められている。豊田さんには、外務省に6年あまり在籍した経験がある。日本の公式見解の側にいた人の言葉だけに、教えられることが多かった。

毎日新聞 2008年8月9日 0時05分

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