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コラム

山根一眞の『The環業革命』

次世代の明かりが照らす世界[後編]

政府に求められるリーダーシップ
蛍光灯化超えたLED化の流れを

年間13億個の白熱電球の販売を中止する意味
IDECは、LEDの各種モジュールを照明器具メーカーなどに供給することをめざす
IDECは、LEDの各種モジュールを照明器具メーカーなどに供給することをめざす
山根一眞の『The環業革命』写真館へ

 政府は、2010年に白熱電球の製造を中止し、蛍光灯や電球型蛍光灯への転換を進めると発表した。しかし、IDECの「全館LED照明システム」を見ると、LED化への転換を一気に政策にすべきではないか、と思う。

 家庭が「照明」のために費やしているエネルギー量は約16%。確かに家庭では、まだ白熱電球の使用が多いために、脱白熱電球は大きなCO2削減をもたらすだろう。問題はオフィスビルだ。オフィスビルでは、エネルギーの約18%が照明用とされるが、電力消費量が大きいオフィスビルの照明は、とっくに蛍光灯化が終わっている。つまり、「脱白熱電球、蛍光灯化転換政策」では、オフィスビルの照明によるCO2削減には何の貢献もしない。とるべき道は……LED照明化だ。

 東芝が日本で初めて電球を発売したのは1890年(明治23年)で、この120年間、何の問題もなく、あらゆる人が、あらゆる場所で利用してきたのが白熱電球だった。今も日本では年間12億8000万個の電球が販売されており、その販売額は約700億円にのぼる(経済産業省、機械統計)。

 13億個近くも売れている製品を、いきなり温暖化の悪者として製造を中止させるのだから、その強い意図を広く伝え、LEDも含めた次世代照明の普及をはかるために全力を尽くすべきだろう。とりわけ、オフィスビルのLED化を促進する意志が求められる。そこで、まずは経済産業省と環境省、財務省、総理官邸の全照明をLED化し、2010年までに霞ヶ関の全建物もLED照明化する気合いを示してほしい。

 日本が温暖化対策先進国であることのアピールは、霞ヶ関官庁街が率先してこそ世界に受け入れられるものと思う。

 ちなみに、IDECは大阪を代表する企業だが、地盤沈下が語られる大阪府は、こういう取り組みこそ未来の力になると受け止め「府の建物の全LED化」を打ち出せば、エコ産業時代のインシアチブを握れるはずだ。だが、歳費削減にしか頭が回らない橋下徹知事は、IDECの世界初の全館LED化ビルの存在すら知らないのではないか。
 

山根 一眞 氏
 
日本力
 
環業革命
山根 一眞 氏 (やまね かずま)
ノンフィクション作家
 

1947年10月12日、東京都中野区生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。著書に、最新刊『メタルカラー烈伝日本力』など『メタルカラーの時代』シリーズの単行本と文庫本(小学館)は合計20冊を数える。『環業革命』(講談社)は10年にわたる取材成果をまとめた。その他、『アマゾン入門』、『東京のそうじ』、『モバイル書斎の遊戯術』、『デジタル産業革命』、『山根一眞の素朴な疑問』など。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、同宇宙科学研究本部客員教授、中央教育審議会専門委員(文部科学省)、生物多様性戦略検討会委員(農林水産省)、日本生態系協会理事、青森県アドバイザー、北九州マイスター選考委員、日本経済新聞社「ものづくり大賞」選考委員、NTTドコモアドバイザリーボード(社外取締役)、講談社出版文化賞科学出版賞審査委員。日本エコツーリズム協会、国際技能工芸機構、共用品推進機構、インターネット協会、日本聴導犬協会、大宅壮一文庫などの各評議員。2001年北九州博覧祭北九州市出展「ものづくりメタルカラー館」プロデューサー、2005年日本国際博覧会・愛知県総合プロデューサー、国民文化祭ふくい2005・総合プロデューサーなどを歴任。日本文藝家協会会員。

●山根事務所 (http://www.yamane-office.co.jp/)

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この記事の目次
次世代の明かりが照らす世界[後編]
政府に求められるリーダーシップ
蛍光灯化超えたLED化の流れを

CO2削減技術 省エネルギー

エネルギー消費 建築物

CSR対策 温暖化防止費用

電気事業連合会