IDECの「全館LED照明オフィスビル」の竣工から1カ月後の4月6日、甘利明経済産業大臣は、サミット会場の地元、洞爺湖町で開催した地球温暖化問題の国民対話で、「2012年までに国内の白熱電球を全廃する」という政府決定を発表した。LED照明の普及へ、政府としてきわめて大きな力を入れる……、のかと思ったが、違った。

　電球形蛍光灯への切り替えを図る、ということなのだった。翌日の午後2時、経産省の記者会見室で北畑経済産業事務次官は、この発表をこう補足した。

　「（白熱電球の全廃は）世界で初だと思いますけれども、そういう方針を決定したということです。世界に胸を張れる具体的な二酸化炭素削減対策に日本が踏み切ったということです」

　この政府の決定を受けたからか、東芝は白熱電球の製造中止を伝える全２面の新聞広告を掲載した。6月に入り松下電器も、2012年までに白熱電球の生産を約5割削減すると発表した。

　「白熱電球の全廃」は、私が10年間待ちに待っていた決定であり、4年で切り替えるというのはなかなかだ。ただ、それにしても遅い！　京都会議の1997年にその決定をしていれば、すでに日本からは、ほとんどの白熱電球はなくなっていただろう。また、京都議定書が発効した2005年に踏み切っていれば、来年には「全廃」の日が迎えられたはずだ。

　また、北畑次官が「電球形蛍光灯へ」という方針で「世界に胸を張る」というのも情けない。これだけの決断ができたのだから、思い切ってLEDへのシフトも決めるべきなのではないか。2012年以降の日本の照明には、LEDが視野に入っているのだろうか。それとも、LEDはその期待に応えられる潜在力がないということなのだろうか。

　IDECの全館LED照明の世界初の試みの現場報告もあわせて次号で紹介する。
 

山根 一眞 氏 （やまね かずま）
ノンフィクション作家
 

1947年10月12日、東京都中野区生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒業。著書に、『メタルカラー烈伝トヨタ世界一時代の日本力』、最新刊『メタルカラー烈伝鉄』など『メタルカラーの時代』シリーズの単行本と文庫本（小学館）は21冊を数える。『環業革命』（講談社）は10年にわたる取材成果をまとめた。その他、『アマゾン入門』、『東京のそうじ』、『デジタル産業革命』、『山根一眞の素朴な疑問』、『賢者のデジタル』など。

宇宙航空研究開発機構（JAXA）嘱託、同宇宙科学研究本部客員教授、生物多様性戦略検討会委員（農林水産省）、日本生態系協会理事、北九州マイスター選考委員、日本経済新聞社「ものづくり大賞」選考委員、NTTドコモアドバイザリーボード（社外取締役）、講談社出版文化賞科学出版賞審査委員、大宅壮一文庫評議員。2001年北九州博覧祭「ものづくりメタルカラー館」、2005年日本国際博覧会・愛知県２館、国民文化祭ふくい2005の各総合プロデューサー、中央教育審議会専門委員（文部科学省）などを歴任。日本文藝家協会会員。

●山根事務所
（http://www.yamane-office.co.jp/）