芸術・文化

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

東京中央郵便局:再整備計画 異論唱える声相次ぐ

 建て替えが取りざたされていた東京駅前の東京中央郵便局について、日本郵政はこのほど、地下4階、地上38階の高層建築にする再整備計画を発表した。

 1931年に完成し、日本の初期モダニズム建築の代表例である現建物を「できるだけ保存、再現する」として外壁などを残すイメージ図を公表。しかし、計画に異議を唱える専門家らも多く、論議はまだ続きそうだ。

 現建物は、大阪中央郵便局(39年完成)と共に、逓信省の建築家・吉田鉄郎の代表作。機能と構成美を重視した鉄骨鉄筋コンクリート造は、オフィスビルの先駆け的存在だ。日本郵政は、老朽化などの問題に加え、民営化に伴う新たな収益事業として不動産の有効活用を検討していた。

 これまで、日本建築学会などが保存の要望書を提出。3月には、建築家や市民ら130人でつくる「東京中央郵便局を重要文化財にする会」も発足した。

 全体保存を求める人々が大きな根拠とするのは、文化庁の見解だ。07年12月の衆院決算行政監視委員会で担当者が「近代建築のすぐれた作品の一つ」「国の重要文化財として指定を検討する価値を有している」と発言している。

 日本郵政は、都市計画や建築史などの有識者9人による「歴史検討委員会」に現建物の今後について検討を依頼。委員会は、全面保存・一部保存など複数案を併記する報告書をまとめた。しかし同社は、同委員会の意見をどう反映させたかは公表していない。

 先月末に都内で開かれた、吉田の仕事を顕彰するシンポジウム(日本建築学会主催)では、現建物が話題の中心に。多くの発言者が「建物の価値は、内部の柱と梁(はり)による無駄のない様式など全体にある。部分保存ではその価値を後世に伝えられない」と懸念を表明した。

 また、現建物のある千代田区議会は4日、「歴史的建造物は外観だけが残されても、その文化的役割を果たすことができない」と保存を求める要望書を可決、同社に送った。国会議員も超党派で結束し、9日、建物の重要文化財への指定を要望する153人分の署名を文化庁長官に提出した。「重要文化財にする会」は22日、計画段階における「保存・再現」の詳細などを問う公開質問書を日本郵政など2社に郵送した。

 日本郵政は「保存を求める多くの声を尊重し、総合的に検討した結果だ。現建物の構造を含めた保存を考えているが、詳細は工事発注手続きの関係で8月まで公表できない」と説明する。文化庁文化部は「有識者がモダニズム建築の代表作と評価する建築であり、文化財的価値が保たれるよう望む」と話す。【手塚さや香、岸桂子】

毎日新聞 2008年7月28日 東京夕刊

芸術・文化 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報