「ポニョ」素朴さに賛否…試写反応に宮崎監督落ち込み
夕刊フジ(07月22日17時00分)
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映画「崖の上のポニョ」 |
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アニメ界の巨匠、宮崎駿監督が4年ぶりに放つ「崖の上のポニョ」が19日、公開された。「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」でファンを圧倒した巨大な世界観から「となりのトトロ」に原点回帰したような素朴さにファンの評価は分かれそうだ。
三連休と夏休みのスタートが重なった土曜日、全国の「ポニョ」上映館では早朝から子供連れのジブリファンが訪れた。
映画は、アンデルセン童話の「人魚姫」をベースに魚の子・ポニョと、海を見下ろす崖の一軒家に住む5歳の男の子・宗介の2人が主人公のピュアなラブストーリー。宗介の母リサを山口智子(43)、ポニョを海に連れ戻そうとする父フジモトを所ジョージ(53)が担当するなど声優陣は実に豪華。宗介の父、耕一は長嶋一茂(42)が担当しているが、スタジオジブリ出身者の一茂のマネジャーの売り込みで起用が決まったという意外な経緯もあった。
CGアニメ全盛の今、あえてすべて手描きで挑んだ優しいタッチが目を引く。
1972年に公開された中編アニメ「パンダコパンダ」や「となりのトトロ」(88年)など、昔からの宮崎アニメファンには懐かしいほのぼの感があふれる。その分、最近のファンは少々、戸惑うだろうか。
「風の谷のナウシカ」(84年)で「アニメ映画は子供向け」というそれまでの常識を覆し、「もののけ姫」(97年)で確立した世界観。だが宮崎監督の盟友・鈴木敏夫プロデューサーは今月、都内での完成報告会で「大人に寄りすぎた大きな反省があった。宮さんには僕から『次は子供向けをやろう』と言った」と新たな決意を語っている。
「子供たちにきちんとした映画を見せる順番。僕は傑作だと思う」とも。病んだ世相へ童心に帰る大切さを伝えたかったようだ。
試写を見た映画評論家やベテランライターの評価は割れた。辛口意見から拾ってみる。
「自然破壊や道徳、反戦を真正面から扱った直近の3作と比べると、愛と約束を守るというテーマは重要だが地味すぎる」「海が舞台の割にはスケール感がなく、高揚感も今ひとつ」「刺激に慣れた子供たちは同じ日に公開の『ポケモン』に足が向くのでは」
実は当の宮崎監督も、「試写で作品を見た子供たちの反応が全く無く、『子供たちのために作ろうとしたのに空振りだったのか』と落ち込んだ」ともらしている。
ジブリ映画に詳しい映画ライターの安保有希子さんは支持派だ。
「内容について議論したいならば別の作品を見に行ったほうがいい。“ポニョ”は、頭で考えるよりも全身で楽しむ感覚に近い映画。ポニョのちょっとした動きが面白く、宮崎監督の人間を観察する力量を見せつけられた」
さて、どこまで興行成績を伸ばすことができるか。
配給関係者は「興収200億円以上が目標。それを基準にスクリーン数やスケジュールを組んでいる」とダブルミリオンを狙う。邦画で断トツの興行収入を誇る「千と千尋の神隠し」(2001年)が7月公開だったのも心強い前例だ。
日本の映画興行成績は落ち込みが目立っている。今年5月までの総興行収入は前年同期比13.5%減。公開本数は前年並みだが、昨年は50億円以上が3本もあった洋画の大ヒット作が1本もない。
夏休み映画として封切られ、興収40億円を突破した「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」や同38億円に達した「花より男子ファイナル」の快進撃で持ち直しつつあるが、下期の巻き返しに向け、「ポニョ」は一身に期待を背負って泳ぐのだ。
【主な宮崎駿監督作品と成績】
公開年 作品名 成績
1984 風の谷のナウシカ 配給収入7.6億円
86 天空の城ラピュタ 配給収入5.8億円
88 となりのトトロ 配給収入5.9億円
89 魔女の宅急便 配給収入21.5億円
92 紅の豚 配給収入28億円
97 もののけ姫 配給収入113億円
2001 千と千尋の神隠し 興行収入304億円
04 ハウルの動く城 興行収入196億円
*2000年度から興行収入の発表に切り替わった。配給収入は映画によって異なるが興行収入の5〜7割といわれる。