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全国一斉休漁:漁師悲鳴 5年で燃料3倍、出漁で赤字

 「このままではやっていけない」「日本の漁業を見捨てるな」。燃料費高騰による漁業の窮状を訴えようと全国一斉休漁が実施された15日、東京・日比谷公園で漁師たちが悲壮な声を上げた。約3600人が集まった「総決起集会」。この5年間で燃料費は約3倍に跳ね上がり、漁師たちの生活は「出漁すれば赤字」の状態という。20万隻の漁船が出漁を取りやめたこの日、各地の漁港は閑散とし、普段の活気はなかった。

 ■日比谷で集会

 日比谷公園大音楽堂(千代田区)で行われた集会は、全国約1100の沿岸漁協が所属する「全国漁業協同組合連合会」と、漁協に属さない遠洋・沖合業者らを中心とする「大日本水産会」の主催。宮崎県漁連の丸山英満・代表理事会長が「漁業者の自助努力はもはや限界。政府は燃料高騰に対し必要な措置を講ずるべきだ」と決議文を読み上げた。

 愛媛県八幡浜市から来た、ヒジキやウニなどの漁を行う古田宇佐彦さん(65)は「燃料代は上がっても魚価は以前の2分の1。生活できない」。サンマ漁を行う千葉県南房総市の鈴木直一さん(60)は「このままでは全国20万隻の漁船が半分になり、日本の漁業が壊滅しかねない」と声を張り上げた。参加者たちは「国は漁業を守れ」などとシュプレヒコールを繰り返し、集会終了後は農林水産省前など霞が関周辺をデモ行進した。【奥山智己】

 ■八戸

 イカの水揚げ量全国一を誇る青森県八戸市の八戸漁港ではこの日、最盛期を前にして休漁したイカ釣り漁船が岸壁に並んだ。

 八戸みなと漁協によると、16日朝の水揚げはゼロになる見込みで、「前代未聞」という。八戸沖が漁場の岩手県山田港所属の漁師、福士健寿さん(60)によると、1隻が1日に消費する燃料は約400リットルで経費の約6割。集魚灯を用いるイカ釣り漁は特に多くの燃料を必要とする。

 八戸市の漁業会社によると、昼釣りに切り替える船も多いという。担当者は「少ないパイを取り合っている。取らなければ生活できないから、多少のしけでも必死で漁をしている」と苦境を訴えた。【喜浦遊】

 ■築地

 東京・築地の場外市場の鮮魚店主らは「1日だけの休漁なら、ほとんど影響はない」と話す。だが、今後の不安はぬぐえない。店主らは一様に、燃料高騰への政府の対応に不満を漏らした。

 すし店「三珍」の店長、出口徳久さん(45)は「もし魚の値が上がれば、切り身を薄くしたり冷凍品を多く使うことになる。日本の食の伝統を担う漁業者を救済してほしい」と話した。鮮魚店「魚雅」の店主、中島雅一さん(50)は「もし継続的に休漁されたら、魚の値段が跳ね上がり、経営は苦しくなる」と、今後への不安も口にした。【山本太一】

毎日新聞 2008年7月15日 東京夕刊

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