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【断 青沼陽一郎】かば焼き「倍増」のマジック
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徳島の業者が、中国産のうなぎを国産と偽って販売していた事件が発覚してから、1カ月近くが過ぎた。捜査の進展も見られず、全容解明も程遠いままだ。きょうは土用丑の日。そこで、うなぎにまつわる不思議な話をひとつ。
日本の養殖池に放たれるうなぎの稚魚(シラス)の量は、ここ数年はだいたい20万〜22万トンで推移してきた。これが約1000倍の大きさに育って、出荷される。実際に平成19年の国内養殖生産量は2万2643トン、18年は2万733トンだ。これがかば焼きに加工されるときは、頭や中骨を取るから約60%の重量になる。昨年の場合は、国産養殖のかば焼きは約1万3000トンという計算となる。
ところが、かば焼き工場の生産能力や、生産報告数値を計算すると、実際に国内に出回った“国産”のかば焼きの量は推定2万5000トンから3万トン…数が合わない。もちろん天然うなぎがそんなにあるわけではない。
コストの安い中国や台湾の養殖池で育てられたうなぎが、生きたまま日本へ送られてくる。これを国内の養殖池に放ってしばらくすると「国産」として出荷できるのだ。違法行為ではない。日本での養殖期間が海外での期間よりも1日でも長ければ、「国産」と表示できるルールなのだ。
問題はこれをごまかす業者だ。1日だけ池に放して「国産」として出荷する、あるいは、海外産の活鰻(かつまん)も日本の工場で加工したから「国産」と言い張る会社もあるとかないとか…。うなぎだけにつかみどころもない。(ジャーナリスト)