福島県教委が1日付で県立学校のプールでスタート台から飛び込む行為を全面禁止にした措置に、高校の水泳部員が困惑している。県立高校のプールに飛び込んだレスリング部員が死亡した事故を受けて出された通達だが、国体予選の県総体が目前に迫る水泳部員は大会に向けたタイム測定さえままならない。やむを得ず禁を破る高校もあり、水泳部関係者からは「経験を積んだ水泳部員なら危険はないのに」と通達解除を求める声が出ている。
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事故は6月10日、大沼高(会津美里町)で起きた。レスリング部の1年男子(16)が練習の一環で部員らとプールに入り、高さ約60センチのスタート台から飛び込んだ際、水深約1.2メートルの底に頭をぶつけ死亡した。
付き添っていた部顧問は「飛び込む瞬間は見ていない」といい、詳しい状況は不明。県教委は「事故原因が分かるまでの再発防止策」として、スタート台からの飛び込みを禁止した。
1、2年の水泳部員7人が8月の県総体や9月の新人戦に向けて練習に励む福島東高(福島市)では通達後、大会に届ける自己タイムの測定のためスタート台からの飛び込みを数回行った。届け出タイムで泳ぐ順番やコースが決まるため、少しでもいいタイムを出そうと、やむにやまれず踏み切ったという。
同部顧問の藤田敏夫教諭は「通達は尊重するが、一生懸命練習する生徒に飛び込むなとは言えない。部員は経験を積んでおり、事故の心配はないのに…」と困惑。吉田雄基主将は「飛び込みをしばらくやらないと形が崩れてしまう」と影響を懸念する。
県高体連水泳部の村上博専門委員長(福島成蹊高教諭)は「スタートはターンと並んで重要なポイントで、練習次第では大幅にタイムを短縮できる。部活動でも禁止するのはちょっとやり過ぎではないか」と指摘する。
このまま禁止が続けば、例えばリレー競技は練習なしで本番に臨まざるを得なくなるなど、混乱は必至。水泳部関係者は「部活動だけでも早く禁止を解除して」と訴えるが、県教委は「再発防止策が決まっておらず、夏休み中に解除するかは分からない」と話している。
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