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2008-07-21

[]「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる」まとめ@wikiの翻訳は別にひどすぎたりしないが、残念ながら陸上自衛隊第三三普通科連隊の連隊長殿は、南京事件に関わった旧陸軍歩兵第三三連隊の「歴史と伝統」を「継承」したいとおっしゃっているので「後継者」と言われても弁解しにくいかな、という件(追記あり)

「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる」まとめ@wikiの翻訳がひどすぎる件

>that gave the world Pearl Harbor and the Rape of Nanking"

全文が"that gave the world"なんだからこの場合普通ガイジンにとって、


Pearl Harbor = ハリウッド映画のPearl Harbor


Rape of Nanking = アイリス・チャンの著書


のことを意味する。


ニュアンス的には皮肉っぽく:


この世にハリウッド大作映画、Pearl Harborとアイリス・チャンのベストセラーRape of Nankingを与えてくださったご先祖様を持つ日本の某省庁が、今度は日本の防衛政策の簡単な説明をしてくれるタカ派的なテディベアのぬいぐるみを持ったメイド服のかわいい少女漫画キャラクターを与えてくださった、とサイゾー(8月号)より。


皮肉ですのでこの場合のニュアンスは糞映画「Pearl Harbor」と糞本「Rape of Nanking」って感じかな。(w

原文の下線は省略。また「>」で導かれた引用部には「Nanking」という単語のあとに「"」があるけど、引用元の原文にはない。「全文」は「前文」の誤記かと思われるけどもちろん「文」ではない(動詞と間接目的語)。


で、まず動詞句が "give the world" だから映画と本のことだ、という理屈が意味不明。本や映画のタイトルは英語の印刷物ではイタリック体で表記するのが通常のルールだが、電子テキストの場合、ベタのテキストファイルではイタリックが使えないので代わりにクォーテーション・マークを使うこともある。で、こちらをみればわかるように、同記事には

The new book "Heiwa no Kuni no Nebaarando (The Neverland of the Peaceful Country)" has also proved to be as popular as its predecessor, with sales going well since its January release.

という箇所があって、すなわち本のタイトルは " " でくくって表記していることがわかる。だから、「外国人」(って、外国人なら英語が読めるとは限らんわけだが・・・)であろうがなかろうが普通に英語が読める人間が読めば、これは「パール・ハーバーと南京大虐殺を引き起こした」としか読めない。

というわけで、「糞映画「Pearl Harbor」と糞本「Rape of Nanking」って感じ」の「ニュアンス」なんかはありようがないわけだが、さらに言えばマイケル・ベイの『パール・ハーバー』はともかく*1として、アイリス・チャンの Rape of Nanking が「糞本」だという認識は海外の市民にもたれてはいないのであって*2、これは自分の認識を勝手に「外国人」に投影した希望的観測にすぎない。ついでだけど

逆にまとめサイトの日本語訳を英語に訳すと・・・


The successor of the government that attacked Pearl Harbor and massacred Nanking


The successor of the government that was responsible for the attack of Pearl Harbor and the Rape of Nanking

後者はともかく前者はダメ。


さて、この件に関して池田信夫センセイがお怒りである。

サイゾー編集部は、この強調部分の記述が元の記事には存在しないと毎日新聞社に抗議した。これは日本軍の戦争犯罪を性犯罪と同一視して人種的偏見をあおる点で、Wikipediaと同質だ。こうした人種差別=性差別は、Connellのような祖国で通用しない三流ジャーナリスト(本人は「母国での就職難のため来日した」と告白している)や、欧米人の人種的偏見に迎合して「一級市民」として認めてもらおうとするマイク・ホンダやノリミツ・オオニシのようなB級日系人が流しているものだ。

この記事を書く際にことさら真珠湾攻撃や南京大虐殺に言及する必要はないわけであって、悪意のある表現だというのは間違いのないところだ。が、しかし・・・

s_kotakeさん経由で知ったニュースだが、

 同駐屯地司令兼第三三普通科連隊長の甲斐芳樹一等陸佐は、地元新聞に寄せた「創設百周年を迎えて」と題した一文で、陸軍歩兵三三連隊を「日露戦争、支那事変に参戦し数々の戦果をあげ精強部隊として名をとどろかせた」と持ち上げ、「輝かしい歴史と伝統を後世に継承したい」と発言しています。

(2008年4月27日「しんぶん赤旗」)

とのこと。旧陸軍歩兵第33連隊といえば第16師団(長:中島今朝吾中将)歩兵第30旅団(長:佐々木到一少将)を構成する歩兵連隊の一つであって、いわば南京事件の主役となった部隊の一つである。偕行社の『南京戦史資料集』にも「俘虜は処断す」と記載した戦闘詳報が収録されている。一般論として、高い報酬で報いることができるわけではない組織が「歴史」とか「伝統」でもって成員のロイヤリティーを確保しようとするのはありふれたはなしだし、いくら私でも晴れの舞台で南京大虐殺に言及せよとは要求しない。また、これは連隊長の発言であって防衛大臣とか幕僚長の発言というわけでもない。しかしながら、正面切って問題視されればこれは「自衛隊が旧日本軍の後継者であると高級指揮官が言明した」と受けとめられて仕方がない発言である。「人種的偏見」をあおられたくないのなら、自衛隊は旧日本軍の戦争犯罪*3を免罪するかのような動きとははっきり距離を置くべきであろうし、旧軍との連続性ではなく断絶をこそ強調すべきであろう。


追記:私なら「日本アンチキムチ団」なんてタイトルのブログの記事は−−特にそれが旧日本軍医関係するものなら−−まず眉に唾つけて読みますがねぇ。あと、池田センセイのところにはもちろんトラックバック送りましたが、現時点では承認されてませんね。

*1『チーム☆アメリカ』でも "Pearl Habor sucks" とか「なぜマイケル・ベイは映画を作り続けられるんだ?」てな歌を流されていたし

*2:専門家なら「問題の多い本」とは評するだろうが、「糞本」とは呼ぶまい。

*3:そのなかには明らかに性犯罪も含まれているのだから、「戦争犯罪を性犯罪と同一視」などというクレームは無意味。

くま(仮)くま(仮) 2008/07/21 02:40  例によって非本質的なことを書きますが。
 パールハーバーてのはアメリカではありゃ具体的にドコが問題視されてるんでしょう。自分の感想は「三角関係の三人全員が天文学的に虫のいい台詞を連発するゆかい映画」「そしてラブ関係の虫の良さに比べればドンパチ関係の虫の良さなど些細な問題」「一人で見てたらアタマにきてたかもしれんがビデオで三人で見るとすべてが許せる」というものだったですが。

映画好き映画好き 2008/07/21 07:56 『パールハーバー』見てないけど『アイランド』と『トランスフォーマー』はけっこう好きです。
ベイ監督はただ単に“バカ映画”を作りたいんじゃないかと思います。で、それは成功している、と。
ベイ監督が南京事件を映画化したら凄いことになるかも・・・

ni0615ni0615 2008/07/21 08:42 >「輝かしい歴史と伝統を後世に継承したい」
いや少なくとも軍の汚名は後世に残したくない。
91歳の梅澤裕氏もその崇高な任務を背負うヒーローになりたい老人の一人です。
http://mid.parfe.jp/siryou/H19-10-15-umezawasyougenn/top.htm
の2段目をお読みください。

さるさる 2008/07/21 09:04 横ヤリ失礼します。
ここでは意気軒昂のご様子、安心しました。

あそこの掲示板で、もう一度

> 何で、どこで、何人、・・・・
> シベリア抑留って、・・・・・

を論点に、書き込みを再開しましょうよ!

ApemanApeman 2008/07/21 09:12 くま(仮)さん

実は私は観てないのですが、Internet Movie Database のユーザーレイティングも10点中5.3点ですし、ラジー賞にもノミネートされてますから、批評家・映画ファンの間での評価が高くないのはまあ間違いないところで、レビューをいくつか見てみると

>「三角関係の三人全員が天文学的に虫のいい台詞を連発するゆかい映画」

というあたりは大いに関係があるのかもしれませんね。

>「一人で見てたらアタマにきてたかもしれんがビデオで三人で見るとすべてが許せる」

まあ酒でも飲みながら3人でDVDを観る・・・という場合にはダメ映画の方が盛り上がったりしますよね。

映画好きさん

『トランスフォーマー』は確かによかったですね。『パール・ハーバー』については、マイケル・ベイがバカ映画を作りたがってるというより、ブラッカイマーが「映画ってのはこんなもん」と思ってるんじゃないでしょうか。

ApemanApeman 2008/07/21 09:19 ni0615さん

もうあっぱれと言ってよいほど露骨ですね。こんなこと、社会保険庁の役人が言ったら大変な騒ぎになるでしょう(笑) 実際、聞き手のひとにも「その点は意見の異なるところ」と言われちゃってますね。聞き手のひとには、今どき正面切って「組織の汚点は隠蔽しよう」などと主張しても通用しない、という自覚はあるようで。

さるさん

はじめまして。なんか「さるお方」と名乗るひとと同じような内容ですが。ところで、あなたも「兵隊が戦場で日記なんて書くはずがない」と信じておられる方でしょうか? つい最近、過去ログデータを飛ばしてしまった掲示板に誘われるのが魅力的なはなしであるとお考えでしょうか?

ni0615ni0615 2008/07/21 10:54 >>Apeman さん
> もうあっぱれと言ってよいほど露骨ですね。こんなこと、社会保険庁の役人が言ったら大変な騒ぎになるでしょう(笑)

これって職業軍人の共通精神なんですね。その常識を知っていた秦郁彦もかつては、高級将校ばかりから証言をとっても意味をなさない、と冷静な判断を下していたんですけどね。それが今は・・・・・

ApemanApeman 2008/07/21 12:44 阿羅健一の『「南京事件」日本人48人の証言』批判のあれですね。まあ地位が高くなるほど組織へのコミットメントは深くなりますから組織をかばう傾向も強くなるのは常識ですけど、なにしろ自身の聞き取り体験に基づくはなしですから説得力があったんですけどね。

JodorowskyJodorowsky 2008/07/21 13:41 沖縄集団自決関係者の皆本義博氏なんかは、後に自衛隊に入り陸将補にまでなってます。
http://jp.youtube.com/watch?v=4uFVgEpCtMc
戦後の状況下では、どうしても様々な(非公式な)連続性が残ってしまったのは事実ですね。
ただ、自衛隊を正式な軍隊に格上げしたいと願ってる人は、少なくとも建前としての「断絶」は守っていかないと損ですよね。「国益」とか「公」とか言った言葉が好きな人も。

ApemanApeman 2008/07/21 22:10 まあ現実問題として、旧軍の将校を完全に排除して組織をつくるというのも無理でしたでしょうからね。とはいえ、吉田茂は特定の軍人(あえて名を挙げませんが)については自衛隊に関与することを拒否するなど、旧軍との「断絶」にも意を配っていたわけです。

>「国益」とか「公」とか言った言葉が好きな人も。

あまり大きな声では言えないのですが(笑)、旧軍の戦争犯罪・戦争世金を追及しようとする研究者や活動家、市民の影響力が強くなればなるほど、自衛隊の積極的な海外派遣のための対外的な環境は整っちゃうんですよね・・・

hokke-ookamihokke-ookami 2008/07/22 08:00 パールハーバーは特撮はいいです。
平気で現代の軍艦が画面に登場していたり、映像的にはダメダメですが。素人目にも50年の時間経過はわかってしまうと思うんですがね。

>池田信夫センセイ

私の日記でも問題にしたんですが、歴史修正主義よりな発言をした人が「後継」という表現を否定しても、逆にWAIWAI記事の説得力があがるだけだと思います。
Jodorowskyさんみたいに、ちゃんと旧軍の戦争犯罪を批判して「後継」という表現を批判しないと。

ところで、問題のサイトには本来、「雑誌記事の翻訳で、表現やその内容には責任を負い ません。記事の正確さについても保証しません」という趣旨の断り書きがありました。
まとめサイトに問題があるとしたら、但し書きの存在についてきちんとした明記を怠っていたあたりにあるのではないか、と思います。
ついでに、歴史修正主義を批判された時、「ネタ」と称して言い逃れた人々の反応も気になるところですが。

ApemanApeman 2008/07/22 09:19 パールハーバーのCGIはILMですね。

>平気で現代の軍艦が画面に登場していたり

同じくブラッカイマーの『キング・アーサー』でも、キーラ・ナイトレイの靴が現代ものだったりしたんですよ。反対の極には「どうせカメラに写りゃしない」ってところにまで完璧を求める(そして制作費を高騰させるw)監督がいる一方で、「ほとんどの観客が気づかないなら手を抜いてかまわない」という割り切りなんじゃないかと思います。

>私の日記でも問題にしたんですが、歴史修正主義よりな発言をした人が「後継」という表現を否定しても、逆にWAIWAI記事の説得力があがるだけだと思います。

あんなふうにマイク・ホンダやノリミツ・オオニシをディスったところで、所詮日本でしか共感を得られないのにねぇ。

>ところで、問題のサイトには本来、「雑誌記事の翻訳で、表現やその内容には責任を負い ません。記事の正確さについても保証しません」という趣旨の断り書きがありました。

ひろゆきの言い草を丁寧にするとこういう感じですかね。新聞社が2ちゃんねる並みでも困りますが、2ちゃんねらーが文句言えるはなしでもないですよね。

ゲスト


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