【パリ=国末憲人】フランスの原子力企業アレバの関連施設で今月、ウランが漏れる事故が相次ぎ、安全性への信頼が大きく揺らいでいる。当局は「環境への影響はなかった」と説明するものの、実態解明を要求する声が高まっている。
最初の事故は、南仏トリカスタンのウラン濃縮工場から出る廃液処理施設で8日に発生。天然ウラン約74キロを含む廃液がタンクからあふれ、地表や周辺の川に流れ出た。政府は、地下水の使用や周辺の川や湖での遊泳、釣りなどを禁止した。
反核団体のネットワーク「核からの脱却」は「アレバは情報公開を遅らせた結果、住民を危険にさらした」と批判。アレバは施設経営陣の更迭を決めた。ボルロー環境相はパリジャン紙に「もっと透明性が必要だ」と言明。国内すべての原発周辺の地下水の汚染調査に乗り出した。
一方、民間研究機関は、同施設周辺でここ30年間に770トンの放射性廃棄物が漏れ出したと指摘。騒ぎが広がっている。
また、18日には南仏ロマンシュルイゼールの研究炉用核燃料製造工場で配管が破れ、ウラン数百グラムを含む放射性物質が漏れ出したことが発覚。数年前から破れていた可能性があるという。
いずれの事故も、国際原子力事象評価尺度(INES、8段階)で低い方から2番目のレベル1にあたると、仏当局は暫定値を公表。しかし、不信感は強まっており、野党は政府に事件の徹底究明を申し入れた。