goo

バーナンキのpoorな金融政策

かつて日銀の金融政策を"exceptionally poor"と評したバーナンキの金融政策が、「世界経済を破壊する」とか「気違い沙汰だ」とか、激しい批判を浴びている。特に問題視されているのは、銀行救済のためにFRBが供給した過剰流動性が、5%を超える急激なインフレをまねいたことだ。図をみればわかるように、今年の初めから突然、1700億ドルを超える史上最大規模の通貨供給が開始され、これがずっと続いている。しかし成長率は上がらず、逆に2%から1%に下方修正された。議会証言でバーナンキは「アメリカ経済は健全だ」と繰り返したが、もはやかつての日銀と同様、彼の言葉を信じる人はいない。


バーナンキも評論家から当事者になってわかっただろうが、中央銀行が経済を自由自在に操れるなどというのは、マクロ経済学の教科書の中だけのお話にすぎない。Economist誌も指摘するように、現状で中央銀行にできることは限られている。かつて彼の尻馬に乗って、インフレ目標を設定しない日銀を罵倒した素人集団もいたが、当の教祖が通常のインフレ目標値の倍になってもターゲットを設定しない。当たり前だ。いま物価を下げるために金利を上げたりしたら、金融システムが壊滅するだろう。

インフレ目標が有効なのは「巡航速度」で経済が運行しているときで、90年代の日本や現在のアメリカのような「乱気流」に巻き込まれた状況では、金融政策と物価水準に安定した関係はない。特にインフレが資源価格のようなリアルな要因で起こっているとき、マネタリーな手段でそれを抑えこむことはできない。今の経済危機は、それに対して何の処方箋も書けない経済学の危機でもある。

かつて1930年代の危機に対してケインズ理論が登場し、70年代のスタグフレーションにフリードマンが答を出したように、いま経済学に求められているのは、既存の理論にとらわれないで危機の本質を分析し、それにふさわしい政策を考えることだ。ケインズものべたように、経済学者の本業は学術書や論文を書くことではなく、その時代の経済問題を解決するための「パンフレット」を書くことなのである。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
前の記事へ 次の記事へ
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
コメントをするにはログインが必要になります

ログイン   gooIDを取得する
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/b77835bd1b0f9d33b5ddb61e412dec06/19

ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません
 
・このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け付けておりません