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【食と健康】

うつにならない食生活(4) アラキドン酸に脳活性効果

2006年3月28日

浜松医科大名誉教授 高田 明和

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 トリプトファンはどんな食べ物に含まれているのだろうか。まず肉。マグロ、カツオのような赤身の魚にも牛肉などと同じくらい含まれている。トリプトファンを多く含むのは牛乳だ。気分が落ち込んだとき、眠れないとき、牛乳に少し砂糖を入れて飲むと、脳内にトリプトファンがよく取り込まれて効果がある。植物性タンパクには量が少ないと書いたが、大豆には多い。

 魚肉は食肉と同じような抗うつ作用を持つだろうか。最近は肉に含まれる脂肪酸についての研究が進んでいる。魚の肉にはn−3系の脂肪酸と言われるリノレン酸由来のドコサヘキサエン酸(DHA)、イーコサペンタエン酸(EPA)などが含まれており、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの予防だけでなく、DHAは頭を良くするとも言われてきた。

 一方、食肉にはn−6系の脂肪酸のリノール酸由来のアラキドン酸があり、血栓を作るトロンボキサンA2という物質になるから、摂取を減らした方が良いなどと言われた。

 ところがアラキドン酸からはアナンダマイド(至福物質)と言って、心の不安を減らし、安定をもたらす物質が作られるということが分かった。さらにアラキドン酸そのものに脳の活動を高める作用があり、健全な脳の発達に欠かせないことも分かった。

 米国のカールソン博士はアラキドン酸をほとんど含まない牛乳のみで育てた子どもと、アラキドン酸を添加した牛乳を飲ませた子どもを比較した。するとアラキドン酸が足りない子どもは多動性になり、落ち着きがなくなることが分かった。

 アラキドン酸は脳の脂肪酸の18%くらいを占め、アルツハイマー病などで激減する。高齢者もアラキドン酸、つまり食肉をとることが脳の老化を防ぐことになることも分かった。

 しかし肉をとるだけでは十分ではない。脳に入ったトリプトファンがセロトニンに変わるには(1)明るいところに出る(2)運動をする(3)明るい考え方をする(4)睡眠をよくとる−必要もある。

 ドーパミンやノルアドレナリンの基になるチロシンやフェニルアラニンは、どのような食事に含まれているのか。うつ病の薬には脳内のドーパミンを有効利用するリタリンという物質が使われている。チロシンはタケノコに多く含まれる。水煮のタケノコを切ると出てくる白い粉は、チロシンが結晶化して表面に付着したものだ。鶏肉やチーズにもチロシンやフェニルアラニンが多く含まる。エメンタールなどのハードタイプのチーズには牛乳の十倍くらいのアミノ酸が含まれる。

 受験などでは、脳の力を最大限に発揮する「即効メニュー」も有効だ。気分を高め、やる気を出す「タケノコと卵のスクランブルエッグ」は、タケノコに卵を加え、チロシンのダブル効果を狙ったものだ=図。

 

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