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【食と健康】うつにならない食(2) 肉を摂取しセロトニン維持2006年2月21日 肩書き 講師名イミプラミンは非常にうつに効果があったが、副作用も強かった。イミプラミンはモノアミンの量を増やすばかりでなく、アルファアドレナリン神経、ヒスタミン神経、アセチルコリン神経などを阻害するので、発汗、便秘、ときに下痢、低血圧などの副作用があった。そこで副作用がなく、脳内のセロトニンだけに作用する薬が開発された。一九八〇年代にイーライ・リリー社から発売されたプロザック(化学名・フルオキセチン)だ。従来の薬より副作用がなく、瞬く間に抗うつ剤の主役になり、世界で一千万人以上に処方された。 プロザックやイミプラミンはセロトニンなどの量を増やすと言ったが、実は有効利用するだけだ。図にその作用の仕組みを示した。うつ病の場合はモノアミン(とくにセロトニン)の量が少ない。モノアミンなどは放出され、次の神経を刺激すると、また元の神経に取り込まれる。そこで取り込みを阻害すれば、モノアミンは次の神経を刺激し続けるというのが作用の仕組みだ。 とくにセロトニンの場合には選択的セロトニン再取り込み阻害剤SSRIと名付けられた。プロザックの効果が素晴らしいのと、うつに悩む人が多いということから、世界中の製薬会社がSSRIの開発に力を入れ、多くの薬が生まれた。有名なのはパキシルとかルボックスだ。 ぜひ知っておいてもらいたいのは、これらの薬は脳内のセロトニンの量を増やす薬ではないということだ。セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からしかできず、ドーパミンやノルアドレナリンはチロシン、フェニルアラニンというアミノ酸からしかできない。 トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンは必須アミノ酸といって、私たちの体では作ることができない。食べ物としてとらなくてはならない。トリプトファンは肉に多く含まれ、植物性のタンパクには多くない。肉をある程度とらないとセロトニンの量を維持できない。 ダイエットが流行しているが、肉を制限すると、トリプトファンの摂取が減り、うつ病になる危険性が高まる。菜食主義者でも卵はよいとか、牛乳はよいとしている場合も多い。卵、牛乳にはトリプトファンが多く含まれているのでいいが、もし肉だけでなく、卵、牛乳の摂取も極端に制限すると、うつになりかねない。 粗食に戻れと言う人がいた。人生五十年の時代には粗食もいいだろう。しかし日本人の平均寿命は大きく伸びた。長寿と直線的に関係しているのは肉、動物性のタンパクの摂取量だ。脳はストレスに耐える栄養をとる必要がある。肥満の人よりやせている人の方が寿命が短いという研究もある。やせている人はうつになりやすいことも知られている。脳の栄養を考えないと、この激しい競争社会では生き延びられない。
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