ニューヨークの原油先物市場で11日に一時最高値を更新するなど、ガソリン価格が下がる要素は見られない。そんな中、トヨタのハイブリッド車、プリウスの販売台数が毎月、前年同月を11~39%上回るなど、燃費の良さが売り物の車が人気を集めている。実燃費はどうなのだろう。燃費でクラス上位とされる3台を、福岡-北九州間の往復144・7キロで試してみた。【潟永秀一郎、斎藤良太】
プリウスは走行状況に応じてガソリンエンジンと電気モーターを自動的に使い分ける。マツダ・デミオとダイハツ・ミラは、低燃費エンジンを積む車種がある。
実験は運転歴25年以上の3人が交代で運転し、比較用に運転歴15年の記者が98年式国産2000CCのマイカーで同行した。往路(72・8キロ)は国道3号など一般道、復路(71・9キロ)は九州自動車道など高速道主体。エアコンはつけ、制限速度内を前提で車の流れに乗って走った。
結果は表の通り。いずれも1リットルあたり17~18キロ台の高い数値を出した。98年式2000CC車と比べると、往復でガソリン消費量は2・91~3・58リットル少なく、1リットル182円で600円前後の差になった。1カ月に1000キロ走る家庭なら年間5万円程度、同区間を1カ月に20日通勤する人なら年間十数万円の差が出る計算だ。
同クラスのハイブリッド車は他に、ホンダ・シビックに設定がある。デミオと同クラスではホンダ・フィット、日産ノート、三菱コルト、トヨタ・ヴィッツ、スズキ・スイフトなど▽軽乗用車ではスズキ・アルトや三菱ミニカ、スバル・R2なども燃費性能が高いとされる。
結果について、燃費や環境問題を考える自動車雑誌「ECOMO(エコモ)」の岡野健一朗編集長は次のように分析した。
デミオはモデルチェンジで軽量化し、特に13C-Vは軽く、燃焼効率の高いエンジンも積んでいる。燃費を考える際に重量は大切で、装備の多い車は必然的に重くなる。車を買う際は「どうせなら」と上のグレードに目が向きがちだが、ぜひ車重も考慮してほしい。
その意味では、ミラなど軽自動車は軽く、エンジン排気量も小さいので燃費上は有利。時速60キロの定速走行ならミラが一番だったろう。ただ、絶対的な出力は小さいので高速走行や4人乗車などになると不利。1人乗車で近距離が大半、という使い方なら軽が一番向いている。
プリウスは発進時はモーターで動き、ブレーキをかけるとモーターを発電機として使い充電する仕組みで、停止と発進を繰り返す市街地走行が得意だ。逆に、高速道などはエンジン動力が主になるので、車重がある分不利になる。道が渋滞していたら、プリウスがトップだったろう。
また、3車とも無段変速機(CVT)での走行だったが、燃費を考える際には変速機も重要。小型車の場合、普通のオートマチック(AT)よりCVTの方が燃費が良く、ATなら4段変速より5段や6段など多段化した方が有利と言われる。
最後に、車を選ぶ際に最も重要なのは、用途と使用状況だということを強調しておきたい。例えば、2世帯同居で専らレジャー用途だとすると、小型車2台より1台で済む7人乗りの方がエコになる。3車の比較でも触れたが、主に使う道路の状況でも燃費は変わる。近距離が主なら、車を使わず自転車やバイクの使用を考える手もある。ライフスタイルを考えて選んでほしい。(談)
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マツダ・デミオ(13C-V、1300CC、152万円) 18.83キロ/リットル
ダイハツ・ミラ(カスタムX、660CC、131万円) 18.47キロ/リットル
トヨタ・プリウス(S、1500CCハイブリッド、260万円) 17.32キロ/リットル
国産98年式2000CC車 12.85キロ/リットル
※6月26日10~14時、毎日新聞福岡本部(福岡市中央区天神1)-毎日新聞西部本社(北九州市小倉北区紺屋町)間。曇後晴。路面乾燥。ドライバー4人が交代で運転。燃費は満タン法で計測。数値は走行条件などによって異なる。車体価格は福岡地区で各車についての販売会社見積もり。諸税など含む総額
毎日新聞 2008年7月12日 西部夕刊