宮崎駿監督=郭允撮影
宮崎駿監督の4年ぶりの新作「崖(がけ)の上のポニョ」が19日から全国公開される。海辺の小さな町を舞台に、「人間になりたい」と願う魚の子ポニョと5歳の少年、宗介の交流を描いた。画面の隅々まで、人が、海洋生物が、自然が動き回り、アニメーションのだいご味を存分に楽しめる快作だ。「子供たちを祝福したかった」と語る監督の思いやいかに?
崖の上の一軒家に母親のリサと住む宗介は、ある日、ジャムのビンの中でもがくポニョに出会う。家出したポニョを、「僕が守ってあげるからね」と約束して連れ帰る宗介。しかし、ポニョを連れ戻そうとする海の勢力がすぐそこまで迫っていた……。
下敷きにしたのは監督が9歳のとき初めて読んだ文字だけの本「人魚姫」。人魚が海の泡になってしまうアンデルセンと異なり、ポニョの願いをかなえるべく、宗介は、リサやポニョの母である海の精霊、デイサービスセンターの老女たちに見守られ奮闘する。
シンプルな筋運びは前作「ハウルの動く城」の反省から。「わかりにくいと言う人が多くて。ならば5歳の子供にわかってもらえる話を作ろうと。5歳というのはものごとがわかっているのに、言葉にできないもどかしさを抱えている。そんな子供に最小限の言葉だけでも楽しんでもらいたかった」
確かに絵は「ハウル」と比べてすっきり。その分、動きの密度は濃い。とりわけ水の表現が秀逸だ。
宗介を好きになったポニョは、人間になるため海の力の源泉となる魔法を解き放つ。穏やかな海は突如、荒々しさを増し、町に嵐が押し寄せる。巨大魚のようにうねり迫る波と車に乗ったリサが繰り広げる“カーチェイス”。嵐で水没した町にポニョと2人ボートでこぎ出す宗介の眼に映る、うようよと動き回る古生代の海洋生物……。CGを使わずすべて手書きで、その数、実に17万枚に上る。