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韓国人の生活に溶け込む道教

【新刊】鄭在書・著『韓国道教の起源と歴史』(梨花女大出版部)

 韓国の伝統文化を語るとき、よく「儒・仏・仙の調和」という言葉が出る。ここで言う「仙」とは道教のことだ。儒教や仏教ならどんな宗教なのかすぐ思い浮かぶが、道教は馴染みがないイメージを受ける。だが仙人の話ならどうだろうか。童話やお年寄りの昔話で聞いたことはないだろうか。道教は知らず知らずのうちに韓国人の生活の中に溶け込んでいるのだ。

 梨花女子大学中国文学科教授で、東アジア精神の源流を研究している著者の鄭在書(チョン・ジェソ)氏は、この本で道教が及ぼした韓国文化への影響を追跡している。『不死の神話と思想』『道教と文学、そして想像力』などの著書で中国の道教について書いてきた著者だが、今回は韓国の道教に焦点を合わせた。

 正式に韓半島(朝鮮半島)に道教が伝わったとされるのは高句麗・栄留王7年(624年)。唐の初代皇帝・高祖(李淵)が道士を派遣、元始天尊像と道法が伝えられたという。その道士は「道徳教」を教えたそうだ。しかし著者は、これはあくまで「正式」な歴史に過ぎないという。それ以前から、いや古朝鮮以来、韓民族には原始的な形で道教が存在したと主張しているのだ。桓因・桓雄・檀君を三位一体と考える檀君神話をはじめ、儒・仏・仙を信条とする「花郎道(ファランド)」、空に向かって行う祭祀「醮祭(チョジェ)」などもすべて道教的な性格を示しているというものだ。唐が高句麗に伝えたのは道教そのものではなく、格式や体系などの「形式」だったと主張する。

 このように韓半島に伝わった道教は、土着道教と合わさり韓国的な道教になった。道教に関する「正式な歴史」は高麗時代の「福源宮」や朝鮮時代の「昭格署」といった官房機関につながる。だが、民間道教も朝鮮時代初期の士族を中心に広まった「丹学派」をはじめ民間信仰の形で脈打っている。そして朝鮮時代末期の「東学(トンハク)」や「甑山道(チュンサンド)」といった民族宗教の誕生にも影響を及ぼしたとしている。

 「日本植民地からの解放後の韓国道教研究の流れ」「韓国道教概説」「韓国道教の起源」「韓国道教の歴史的展開」「韓国道教文学における神話の専有」「高句麗古墳壁画に表現された道教図像の意味」などからなるこの本は、中国道教と韓国道教の共通点や相異点を示してくれる。

キム・ハンス記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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