開幕まで3週間に迫った北京五輪の観戦ツアーの売れ行きが伸び悩んでいる。メダルが狙える野球や体操のツアーこそ発売直後に売り切れたものの、知名度の低い競技や予選しか見られないツアーは在庫を抱え、旅行代理店は追い込み販売に懸命だ。挽回(ばんかい)はなるのか?【坂井隆之】
◇競技で差
「冷凍ギョーザ中毒事件、チベット問題、四川大地震……。春から悪いニュースばかり続いたことが響いている」。大手代理店、日本旅行の担当者は困惑気味に話す。5月から売り出した800人分のツアーの予約はまだ100人程度。水泳、野球、体操などの人気競技観戦ツアーが早々にさばけた後は動きが止まった。特に陸上、柔道の予選、男子レスリングなどは売れ残りが目立つ。人気スポーツのサッカーの観戦ツアーも、「ワールドカップと違い、23歳以下という選手の年齢制限のある五輪は売れ行きが今ひとつ」と浮かない表情だ。
他社も勢いに欠ける。ソウル大会以来20年ぶりのアジア開催ということで、最大手のJTBは前回アテネ大会の3倍強の1万人分のツアー販売を決めた。しかし、3月の販売から3カ月余りで、売れ行きは目標の6割強にとどまる。東急グループ系のトップツアーは2000人の目標に対して半分あまり。全日空グループのANAセールスも1200人の募集に対し6割ほどと苦戦が続く。
◇予想外続き
北京大会のチケットは昨春、大手代理店など8社が割当枚数を日本オリンピック委員会(JOC)に要望。JOCからアテネ大会より2万枚多い7万枚の配布を受けた。06年の中国旅行者数は前年比10%伸びたこともあり、要望が強気だったことも裏目に出た。トップツアーは「アテネの倍の目標を掲げてチケットを押さえた。こんな事態になるとは予想できなかった」と頭を抱える。
16万枚だったソウル大会は即日完売が相次いだのに比べ、今回これだけ伸び悩んでいる背景に、食品安全や環境問題、大地震などがあるのは明らかだ。JTBが見込んだ夏休み(7月15日〜8月31日)の中国旅行者数は前年比36%減で、「観光のついでに五輪を見ようという人が大幅に減った」(ANAセールス)。
◇追い上げ
代理店の一部には「そもそも確実な販売が見込める『おいしいチケット』の割り当てが少ない」(大手代理店)との不満もある。人気の福原愛選手が出場する卓球、前回金メダルの男子体操などは日本への割り当てが少なく、客の要望に応えられなかった面があるためだ。
ただでさえ航空運賃の値上がりで海外旅行客が低迷する中、一層の業績悪化につながる売れ残りは避けたいところ。「全国の競技団体や愛好会などを回って団体ツアー獲得を図る」(JTB)など追い込みに懸命。北京行きのツアーに、人気薄の観戦チケットを100円でつけたり、10万円値引きの女子バレーボール観戦ツアー(19万8千円)も出現している。
【関連ニュース】
<<関連特集>>最新ニュースが満載 北京五輪
<<関連写真特集>>北京五輪 サッカー日本代表の主な顔ぶれ
<<関連写真特集>>バドミントン:五輪代表会見 オグシオらワンピース型披露
<<関連写真特集>>競泳ジャパンオープン最終日
北京五輪:四川大地震が演出テーマに 総指揮は張芸謀氏