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大分県教委汚職:「金で先生、子どもたちに何教えるのか」/口利き断り、教員の夢断念した女性

女性が教師を目指して勉強していた学習机=金澤稔撮影
女性が教師を目指して勉強していた学習机=金澤稔撮影

 大分県の教員採用事件を巡っては、十数年前から口利きによる合否調整が行われていたことが明らかになっている。約10年前、ろう学校の教諭を目指し3回受験して不合格になった女性(33)は、金による口利きの誘いを断り、夢を断念した。「お金を使って先生になって、何を子どもに教えるのか。後悔はしていないけど、悔しい」。ニュースに接するたび、やりきれない思いにとらわれるという。

 女性は高校まで大分市内で過ごし、教員養成に定評のある県外の国立大学に進学した。ろう学校を目指したのは高校時代、手話同好会でろう学校の生徒たちと交流し「子供たちの目がきれいだったから」。

 自営業の父親が体調を崩し、アルバイトと奨学金で通う学生生活。小中高、ろう学校、養護学校の教員免許を取るため、大学の授業は毎日6コマすべて埋まっていた。他の職種の就職活動をする時間もなく、教職一筋に猛勉強してすべての免許を取り、ろう学校教諭の採用試験を3回受けた。

 2回目の受験で一次試験に合格した後、母親が知人から「200万円で県会議員に頼めば採用される」と持ちかけられた。母親から「一生を左右することだから、親せき中からお金を集めれば」と打ち明けられた。が、「それで先生になって子供たちに何を教えるのか」と断った。今回の事件を耳にして「やっぱりな」と思った。

 女性の母親も悩んだ。事件発覚後、ニュースをあえて娘に知らせなかった。母親は「たくさんの善良な人が悲しい思いをした。金を持っている人が先生になるのではなく、子供たちのことを本当に考える人が先生になってほしい」と話す。

 女性は東京の大企業に契約社員で入社し、登用試験を受け正社員となったが、今も先生になりたい気持ちはあるという。ただ、結婚し仕事にも責任がある今、遠い夢となった。それでも「あの時の成績を知りたい。自分はなぜ落ちたのか、真相を知りたい」と願う。

 事件を受け、県教委は過去の試験についても調査を検討している。【深津誠】

2008年7月15日

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