JR環状線の線路をまたいで工事中の阪神なんば線(手前は阪神西九条駅舎)
事業開始に向けて着々と進む阪神なんば線だが、相互乗り入れについて近鉄と阪神の間では微妙な温度差があるかもしれない。阪急阪神HDの角社長の目は梅田と難波に向いている。一方、近鉄の関心は「神戸の観光客を奈良まで導くような仕組み」(高松啓二・近鉄常務)にある。近鉄の小林哲也社長が「将来は特急を走らせたい」と話しているのに対し、阪神の坂井信也社長は「需要がどれだけあるのか、まず開通後の状況を見て判断したい」と慎重なのも両社のスタンスの違いを象徴している。
今年10月、阪急阪神HDが神戸市から神戸高速鉄道株を買い取り、傘下に収める方針が明らかになり、近鉄にとって阪神なんば線が持つ魅力はさらに増した。現在も阪神は梅田駅から神戸高速経由で山陽電気鉄道の姫路駅まで直通特急を運行している。山陽電鉄の筆頭株主は阪神だが、そこに阪急阪神HD入りした神戸高速が加われば、全体でよりいっそう柔軟で機動的なダイヤ編成が期待できる。
西九条―三宮―山陽姫路間は89.2キロメートルある。近鉄奈良―近鉄難波間は32.8キロメートル。阪神なんば線の分を加えた姫路―奈良の総延長は125.8キロメートルに達し、長距離路線に有料の特急を走らせるという近鉄のビジネスモデルに当てはまる。ただ、阪神は有料の特急を走らせていない。近鉄スタイルの特急を運行するには券売機や座席指定システムを新たに整備する必要があり、設備投資を伴うのが難点だ。
|